水筒係の遠征

トゥルカは、仲間が水を飲むたび水筒を取り上げた。

口を湿らせる量、歩く速さ、風の熱さを見て、必要な者へだけ渡す。喉が渇いたと訴えても、すぐには栓を開けない。

砂漠で戦わない水筒係の貢献は4%。隊長メルザは、配給を渋る嫌がらせだと決めつけた。

「水は全員のものだ。管理を外せ」

トゥルカは革袋を渡し、隊列から離れた。メルザは仲間へ好きなだけ飲ませた。

午前のうちは笑い声が続いた。重い水を抱える必要もなくなり、空になった袋を砂へ捨てる者までいた。

熱風が強まる頃、笑いは消えた。

水は残っていない。焦って飲んだ者ほど汗が止まらず、足が痙攣した。メルザは先に泉があると地図を掲げたが、蜃気楼へ向かって隊を歩かせていた。

遠くで商隊の布を張っていたトゥルカは、捨てられた革袋を見つけた。乾き方から、隊が風下へ進んだと分かる。

彼女は追いつくと、残っていた外套を岩へ広げた。夜の冷気を含んだ裏地から水滴を集め、倒れた仲間の唇へ落とす。飲ませるのではなく、呼吸が戻るだけの湿り気を与えた。

「もっと寄越せ」

メルザが手を伸ばす。

トゥルカはその手を退け、最も弱った仲間へ先に渡した。

トゥルカは休ませる場所にも順番をつけた。熱を持つ岩から離し、風を背に受けさせ、空の革袋を日除けへ変える。水がないから終わりなのではない。水だけで生き延びようとした判断が危険だった。仲間たちは、彼女が管理していたのは袋ではなく身体そのものだと知った。空の袋さえ、彼女の手では命を守る道具になった。

帰還後、メルザは水不足を異常気象のせいにした。環境腕輪は、飲水量だけでなく発汗、歩幅、風向き、捨てられた袋まで照合した。これまで誰も倒れなかったのは、水が豊富だったからではない。トゥルカが渇きを先回りしていたからだ。

彼女は水筒を腰へ戻し、隊長より先に進路を決めた。

《生存貢献・真正算定》

申告値:4% → 真値:94%

働き順位:首位 トゥルカ

役割更新:水筒係 → 環境生存長

旧隊長メルザ:配給受領者