百人で一台を満たす

王都工芸祭へ出品できるのは、荷車一台分を送れる商人だけだった。

郊外の職人百人は、刺繍一枚、木匙十本、硝子玉一箱と荷が小さい。運送組合は一人にも一台分の銀貨を求め、払えない品は町に残された。苗代倫花が共同便を申し出ると、組合長は笑った。

「他人の荷を混ぜれば、なくなる」

倫花は祭会場の同じ区画へ向かう百人の品を、一つの大荷車へ集めた。職人ごとの布袋を封じ、荷台の床へ一から百までの枠を描く。誰の品も別の枠へはみ出さない。

出発前、百人が自分の番号を確認した。荷車は隙間なく埋まり、重さは定量ぴたり。一人あたりの運賃は銀貨一枚から銅貨八枚へ下がった。

組合長は「祭まで二日はかかる」と言ったが、百台を集める必要はない。一台だけが夜明けに門を出て、正午には会場へ着いた。

荷台の枠順に品を下ろす。受け渡しは四十分。紛失、零。割れた硝子玉、零。百人分の店棚が開会鐘より先に並んだ。

祭会場の検品官は、一台の荷を百件としてではなく、番号枠一から百まで順に確かめた。開梱した袋を元の枠へ戻すため、隣人の品が混ざらない。保険商も、荷車一台を丸ごと保証し、職人一人あたりの保険料を従来の六分の一にした。

運送組合が恐れさせていた紛失は起きず、むしろ百台が別々に来るより受領印は一枚の一覧へ揃った。会場前の渋滞もなく、荷下ろし口を使った時間は四十分だけ。去年は小口出品者三十台で半日塞がっていた。

職人たちは売上から共同運賃を引いても、手元に昨日の三倍が残ると知った。小さすぎて運べなかった荷が、百人分集まった瞬間、大商会一台と同じ条件を手に入れた。

その日の夕方、郊外の木匙職人には三百本、刺繍師には王宮から二十枚の注文が入った。これまで運賃より安いと見向きもされなかった品が、王都の買い手へ届いただけで売れていく。

翌週分を頼む職人が倫花の机へ列を作った。荷は百人合わせて、またちょうど一台になった。

祭運営官は運送組合の独占札を外し、倫花へ新しい許可証を渡した。

「小口共同便を正式路線にする。最初の百人だけではない。王領中の小さな荷を、君の一台へ集めてくれ」