眠らない仕分け機

宅配倉庫の仕分け機は、午前二時から十一分おきに止まった。

生駒叶が現場へ呼ばれるたび、表示は同じ「光電センサー遮断」。ベルト上に詰まりはなく、再起動すれば動く。主任はセンサーを交換しようとしたが、予備部品の到着は朝だった。交換作業を始めれば、その間に締切便が三本止まる。故障と決めること自体が、いちばん大きな停止になりかねない。

「十一分って、機械にしては几帳面ですね」

叶は停止時刻を紙に並べた。荷物が一周する循環ベルトの所要時間も、速度を落とした今は十一分。どこかに同じ荷物が乗り続け、毎周センサーを惑わせている。

彼女は再起動せず、ベルトを区画ごとに目で追った。やがて黒い小箱が来た。送り状が剥がれかけ、透明テープで全面を覆われている。センサーの前を通る瞬間、テープが照明を反射し、箱の端ではなく長い物体として読ませていた。行き先判定もできず、箱は排出されないまま一周していた。箱は十一分ごとに機械へ同じ嘘をつき、そのたび人が機械を疑っていた。

主任が箱を取ろうと手を伸ばす。叶は非常停止を押した。

「止まったように見えても、惰性があります」

ベルトが完全に静止してから箱を抜き、透明テープを剥がす。ただ貼り直すだけでは、送り状の印字まで傷む。叶は番号を照合して新しい送り状を発行し、反射しない紙テープで端だけを補強した。

さらに、似た補修をされた箱がないか、投入前の荷物を一列だけ止めた。三箱見つかった。全部を直してから速度を戻す。

午前三時、十一分が過ぎた。警告灯は点かない。二十二分、三十三分と経っても、仕分け機は眠らなかった。

主任は交換予定だったセンサーを箱へ戻した。

「故障じゃなくて、荷物が時計だったのか」

叶は停止時刻を書いた紙を操作盤へ貼った。原因が消えても、同じ間隔で止まった事実は次の手掛かりになる。

その直後、荷受け口から大型便の到着を告げるブザーが鳴った。ベルトの上へ、透明な袋に包まれた箱が何百個も流れ込んでくる。

叶は紙テープの残量を確かめ、投入位置へ向かった。仕分け機が眠らない夜は、人のほうにも休む順番をくれなかった。