眠り姫を救うのは笑い涙

王女は、百年眠る呪いを受けた。

解除には「王族の涙一滴」が必要だと古文書にある。だが父王は亡くなり、幼い弟王子は姉の前で泣けないほど怯えていた。

対価鑑定士リュメが呼ばれると、宰相は冷たく告げた。

「日没までに涙が出なければ、王子の指を切る。痛みなら泣くだろう」

【対価鑑定:現象を成立または解除するため、条件を満たす最小の代価を表示する】

リュメは王子を抱きしめた。呪いが求めるのは本当に悲しみなのか。古文書には、ただ涙としかない。

彼女は眠りの呪いそのものを鑑定した。

最小の代価――王族が心から流す涙、一滴。感情の種類は問わない。

「泣かせるのではなく、笑わせます」

宰相は怒鳴ったが、リュメは宮廷道化の帽子を奪った。曲芸はできない。だから王女が昔、弟へしていたという変な顔を侍女から教わり、必死に再現した。

一度目は失敗。二度目は王子の口元が動く。三度目、帽子の鈴がリュメの鼻へ落ちた。

王子が吹き出した。

笑いは止まらず、小さな目尻に透明な雫が一粒浮かぶ。リュメは宰相が伸ばした手より先に、銀匙で受け止めた。

雫を王女の唇へ落とす。

黒い茨がほどけ、王女のまぶたが開いた。

「弟を泣かせたのは誰?」

最初の一言に宰相が青ざめる。

「笑っていただけです」

王子は姉へ飛びついた。王女は事情を聞くと、弟の指を切ろうとした宰相の印章をその場で取り上げた。

血も命も払わず、寝室には笑い声だけが残る。

王女は目覚めると、呪いを解くためなら幼い弟を傷つけてもよいと決めた評議会を解散させた。代わりに、最小の犠牲を探す役目としてリュメを王宮へ残す。道化は自分の帽子を彼女へ譲り、「国を救った顔をもう一度」と頼んだ。リュメが同じ変顔をすると、王女まで笑い、寝室には二滴目、三滴目の涙がこぼれた。

弟王子は姉の手を握り、次に怖くなった時は傷つけられる前に笑える話を探してほしいと頼んだ。

リュメが道化帽を返そうとした時、鈴が金色に鳴り、職業欄を書き換えた。

【職業:対価鑑定士 → 因果対価鑑定士】