神罰の雷を索道で下ろす

山岳索道係クザンは、荷籠を上げ下げするだけの仕事だと馬鹿にされていた。

鉱石を谷へ下ろし、食料を山上の町へ上げる。一本の鋼索と滑車に命を預けていても、魔法昇降塔を使う貴族は「猿でも引ける綱」と笑った。

技能は高低差がなければ役に立たない。

【索道搬送:一本の索で結ばれた高所の荷を、低所の受け台へ運ぶ。荷の形状と重さは問わない】

神殿は、雷に形などないと断じた。

その神殿が王都へ神罰を落としたのは、民が重税へ抗議した日だった。大神官は雷の束を動力に浮く雲上祭壇から、逆らう町を清めると宣言する。黒雲の底には白い雷が何千本も絡まり、一度落ちれば城壁から井戸まで焼ける。

避雷結界は神罰を防げない。王は自分だけ地下室へ逃げ、市民に広場で祈れと命じた。

クザンは廃坑の索道塔へ登った。塔から谷底の古い揚水槽まで、錆びた鋼索が一本残っている。揚水槽は岩盤の下にあり、雷を受けても町へ通じない。

「雲へ索を結べるものか!」

大神官が笑う。

クザンは荷鉤を空へ投げた。鉤は黒雲を突き抜け、雷の束へ食い込む。高所の荷と低所の受け台が、一本の索で結ばれた。

「神様の荷物なら、山の下へ丁寧に下ろします」

彼が制動輪を一度回すと、空で膨らんでいた雷が巨大な白い荷籠の形になった。落下ではない。索に沿った搬送だ。

何千本の雷は王都の屋根を避け、鋼索だけを伝って谷底へ下りる。轟音は地下で一度鳴り、古い揚水槽を満たした。蓄えられた力で水車が回り、止められていた全市の井戸から水が噴き上がる。

雲上祭壇は雷を失って地上へ降下し、大神官は抗議する民衆の前へ静かに接岸した。

止まっていた工房の水車も、貧民区の揚水機も一斉に回り始めた。大神官が神罰の横取りだと叫ぶと、民衆は満ちた桶を掲げる。神が本当に与えたものが罰か恵みか、答えは澄んだ水となって町じゅうへ届いていた。

錆びた索道塔には廃止札の代わりに、市民が作った新しい受け台の図面が掲げられた。

《職業が【山岳索道係】から【天雷索道主】へ書き換わりました》