竜の子が越えない高さ

竜峰の麓にあるラスタ村では、春になると翼の未熟な小竜が斜面を転がるように下り、菜園を踏み荒らした。成竜を怒らせるため討伐はできない。農民は植え直すたび、今年こそ村を捨てようと口にした。

獣守クオンは、尖った柵ではなく、小竜の胸までの丸石壁を畑の上側に築くと言った。

「越えられない高さで十分です。傷つければ母竜が来ます。壁の端に山へ戻る坂を残します」

建設費は、峰から採れる竜光石の共同売上の三パーセントだけ。畑の広さや家族数には課さない。売上帳と壁費用を同じ板に並べ、三パーセントを一枚でも超えたら翌月へ繰り越す。作業は自由参加だが、参加者は竜光石の採取日を一日優先して選べる。ただし採取量の上限は全員同じだった。

「金を出す商人に採取権を売れば早い」と村長が言った。

クオンは首を振った。

「壁が商人のものになれば、次に畑へ通るにも料金を取られます」

菜園を荒らされた少女リゼットが最初の丸石を転がした。農民たちが続き、採掘人は滑らかな廃石を選び、料理人は作業場へ竜豆の煮込みを運んだ。参加札には大人も子どもも一日一印だけ。速さより、壁を共有する資格を揃えるためだった。

竜光石商が、資金を前払いする代わりに壁沿いへ採取小屋を建てたいと申し出た。クオンは共同売上板の三パーセント欄を指した。『早くできても、畑の入口を売ったら意味がない』。農民たちは工期が延びると知りながら、その判断を支持した。代わりに毎夕一刻だけ働く短い作業枠を設けると、忙しい者も参加でき、予定より二日早く丸石がつながった。

春の朝、三頭の小竜が斜面を駆け下りた。一頭目は丸石壁へ胸を当て、驚いて鼻を鳴らす。尖りがないため傷はない。三頭は壁沿いに歩き、端の坂を見つけると山へ戻った。

畑には足跡一つ付かなかった。

リゼットは坂の入口へ小さな鈴を吊り、その下に板を掛けた。

――越えずに会える場所。

次の小竜が壁越しに鼻を出すと、鈴だけが鳴り、村の子どもたちは笑って手を振った。