答えを先に出さないで

子ども向けクイズ番組の編集で、鳥飼ひよりは笑い声の多い回を担当していた。納品前の確認依頼は一つ。「第三問だけ、答えが出る前に子どもたちが叫んでいる。間を自然に直してほしい」。

司会者が「正解は――」と溜める。まだ何も表示されていないのに、客席の子どもが一斉に「ペンギン!」と叫ぶ。制作担当は、子どもの声を後ろへ動かせばよいと言った。

ひよりは客席の口元を見た。全員が声と同時に「ペ」の形を作っている。音だけ遅らせれば、今度は子どもたちが無言で答えを知り、その後から歓声が追いかける。番組の間を整えるために、実際の反応を作り替えてはいけない。先に届いた合図が、画面のどこにあるかを探す必要があった。

ひよりは音を触る前に画面を停止した。答えのテロップ本体は出ていない。しかし、その周囲に付く水色の光だけが、ほんのわずか早く始まっていた。スタジオの大きな確認画面では、その光がペンギンの輪郭に見えたのだ。子どもたちは編集より先に答えを読んでいた。

原因は文字の時刻ではなく、装飾を動かすキーフレームだった。ひよりは文字だけを遅らせず、光、影、飛び出す雪の粒をまとめて後ろへ移した。どれか一つが残れば、勘のいい子にはまた分かる。

移動後、画面端の雪が切れた。位置を直す際、セーフマージンの外へ出ていたのだ。ひよりは雪を小さくせず、飛ぶ方向を内側へ変えた。勢いは残り、家庭のテレビでも端が欠けない。

再生する。司会者が溜める。子どもたちは口を結び、太鼓の音のあとで光とペンギンが同時に飛び出す。今度の「ペンギン!」は、答えより半歩遅れた正しい歓声になった。ひよりは音を消して見ても、先触れが残っていないことを確かめた。

制作担当は笑って、「子どもが鋭すぎたんですね」と言った。

「映像が正直すぎたんです」

ひよりが完成版を登録すると、隣の部屋から次の収録が始まった。司会者の声が壁を越える。

「第四問。これは何の足あとでしょう?」

モニターには、まだ答えの入っていない新しい作業画面が開いた。