親子商会の利益は零
太陽商会と、その子会社である月商会は、合わせて金貨三百枚の利益を出したと王宮へ報告した。
太陽商会が壺千個を七百枚で作り、月商会へ千枚で売った。太陽側には三百枚の利益。月商会は壺を在庫として持っている。
「成長する商会には王室御用達の印を」
王室御用達の審査場には、太陽商会が用意した金の壺が並び、会頭は利益三百枚を祝う楽隊まで呼んでいた。小さな陶工組合は隅で、外部へ売った百八十枚分の粗末な帳簿を抱えている。見栄だけなら勝負は決まっていた。
景滋が二社の伝票を重ねると、太陽商会の売上と月商会の仕入が鏡のように同じだった。片方を残せば、家の中で荷物を動かすたび利益を作れてしまう。彼が千枚を左右から同時に消すと、金泥の三百も一緒に消えた。倉庫の壺は増えていない。外の客の金も一枚入っていない。楽隊の太鼓だけが、空の利益を祝っていた。
会頭は胸を張った。審査補佐の景滋が、月商会の倉庫を開けさせると、壺千個は一つも外部へ売れていなかった。
景滋は二社の帳簿を一枚へ重ねた。
親から子へ動いた売上千枚を消す。子が計上した仕入千枚も消す。外へ出ていない壺の価値は、もとの製造費七百枚だけ。
最後に残った利益は、零。
「同じ家の右手から左手へ渡して、三百枚儲かったことにはできません」
会頭は二社は別人だと反論した。だが株主も役員も金庫も同じ。王室御用達を申請したのは『太陽月商会連合』としてだった。
景滋が連結後の数字を示すと、審査官たちの拍手は止まった。
しかも会頭は、三百枚の架空利益を根拠に配当を払い、職人の給金を遅らせていた。金庫に残った現金は二十枚しかない。
隣で待っていた小さな陶工組合の利益は、外部へ売った分だけ百八十枚。現金も百八十枚残っている。
王妃は太陽商会の申請書から金印を外し、陶工組合の書類へ押した。
「御用達は、壺を本当に売った者へ」
そして景滋へ王室監査官の首飾りを渡す。
「家族同士の数字まで一つにできる者を、審査長に任命する」