追放料理人の川鱒

王宮料理長だったクレイグは、王の皿へ地味な豆を出した罪で追放された。

辺境の川へ着いた初日、彼は豪華な食材を何一つ持っていなかった。あるのは塩、小麦粉、折り畳み包丁、それに一本の釣竿だけ。

「まず一皿だ」

畑も小屋も明日でいい。今日の仕事は、自分の夕食を釣ることにした。

料理人らしく餌を工夫しようとした。小麦粉へ香草を練り込み、油を一滴、蜂蜜を半滴。だが魚は見向きもしない。宮廷で評判だった配合が、水の中ではただ溶けて流れた。

腹を空かせたまま石へ座ると、足元で蚯蚓が土から顔を出した。

クレイグはしばらく見つめ、笑って豪華な餌を捨てた。必要なのは料理人の誇りではなく、魚が食べるものだ。

蚯蚓を付けた最初の一投で、浮きが沈んだ。飾り気のない餌ほど結果を出したことが悔しくて、同時に愉快だった。料理人が食材へ勝とうとすれば、味は逃げる。王宮で忘れていた当たり前を、川の魚が一度の引きで思い出させた。

釣れた川鱒は一匹。大きすぎず、小さすぎず、鉄鍋へちょうど収まる長さだった。

クレイグは本能で十二種類の香草を思い浮かべたが、手元にあるのは塩だけだった。腹を抜き、皮へ切れ目を入れ、塩を振る。それだけで火へ載せる。

脂が落ちて、じゅうと鳴った。

皮が金色に縮み、川の匂いは香ばしさへ変わる。隣では豆のスープが煮え、丸い湯気が夕暮れの空へ上がった。王に地味だと投げ返された豆だ。

そこへ宮廷の馬車が止まった。新しい料理長の宴が失敗し、外国使節が怒っているという。復職状と、最高級の香辛料箱が差し出された。

クレイグは箱を開け、匂いだけ確かめて蓋をした。

「使わないのですか」

「この魚には強すぎる」

復職状も開かず、焼けた鱒へ箸を入れる。皮はぱりりと割れ、白い身から熱い汁が滲んだ。豆のスープを添えれば、足りないものは何もない。

王の舌を満足させても、料理長の空腹は誰も気にしなかった。今夜の客は自分一人。皿を空にした者が笑えば、それで満点だった。