退席者は二度と戻らない
オンライン人狼会の開始前、主催者が厳しく告げた。
「途中で退席した人は、二度とこの部屋へ戻れません」
参加者九人は画面越しにうなずいた。
第一夜の議論中、一人の映像が突然消えた。
「回線落ち?」
主催者は無言。
「二度と戻れないルールが発動した」
「発言内容に問題が?」
「彼は村人を名乗った」
「役職騙りを検知するシステム?」
「そんな技術があるなら人狼ゲームが成立しない」
数分後、別の参加者が飲み物を取りに立った。画面から姿が消えた瞬間、接続そのものが切れた。
「席を離れただけで退席判定」
「カメラが監視している」
「トイレも許されない?」
「生理現象を利用したデスゲーム」
「九十分なら我慢できる」
「その発言、全員を牽制している。狼だ」
参加者たちは椅子から動かなくなった。
猫がキーボードへ乗って一人が消え、くしゃみで手が当たった一人も消えた。
「残り五人」
「物理的事故まで排除に使う主催者」
「猫はゲームマスター側?」
「猫に役職を与えるな」
主催者へ質問しても、音声が届かないらしく反応がない。
参加者たちは手話とチャットで議論した。
〈主催者が黒〉
〈主催者を追放できない〉
〈部屋を支配している〉
〈最初から人狼ではなく管理者ゲーム〉
残り三人になった時、一人が決断した。
「私が退席して、外から警察へ」
「戻れないぞ」
「誰かが犠牲に」
「オンライン会議から命懸けで出るな」
彼女が退出ボタンを押す。
すぐ別の招待リンクがメールで届いた。押すと、消えた参加者全員が別の部屋にそろっていた。
主催者もそこにいる。
「すみません。無料プランの設定で、誤って“退出者を待機室へ移動し、再入室不可”にしていました。こちらが新しい会場です」
最初の部屋に残った二人だけが、まだ真剣に人狼を探していた。
新しい部屋へ移った全員は、主催者を初日に追放した。
理由は〈設定権限を持ちすぎている〉。
主催者も、その推理だけは否定できなかった。
二度と戻れなかったのは、古いURLだった。