たたまないシャツ

奈都は、Tシャツを畳む順番まで決めている。

 背中を上に置く。左右の袖を折る。裾を三分の一ずつ重ねる。首元が上になるよう籠へ並べる。

 午前二時のコインランドリーでも、その手順は変わらなかった。

 洗濯機が回る間に机を拭き、乾燥機が回る間にメールを整理する。蛍光灯は白く、空調は低く、雨は窓の外で一定に続いている。待ち時間を待ち時間のままにしておくことが、奈都にはできなかった。

 今夜は残業で帰宅が遅れた。

 明朝までに洗う必要のある服はない。それでも籠がいっぱいになったことが気になり、眠る前に全部終わらせるため店へ来た。

 残り十三分。

 隣の乾燥機が止まり、若い女性が入ってきた。大きな布袋を床へ置き、扉を開ける。

 女性は温かい服を、一枚ずつではなく両腕ですくった。

 靴下も、パーカーも、タオルも、形を整えず袋へ落とす。袖が袋の外へ垂れると、それだけ中へ押し込む。最後に紐を結び、肩へ担いだ。

 あまりの速さに、奈都は手元のスマートフォンから目を上げた。

 女性は忘れ物がないか丸い窓を一度見て、すぐ雨の中へ出ていった。店にいた時間は一分もなかった。

 袋の中では、服がきっと皺になっている。

 けれど持ち主は困った顔をしていなかった。帰ればそのまま寝るのかもしれない。明日必要なものだけ取り出すのかもしれない。奈都には分からない。

 自分の乾燥機が止まった。

 温かいTシャツを机へ広げる。背中を上にする。左右の袖へ手を伸ばし、止める。

 空調の風で、裾がふわりと持ち上がった。

 奈都はTシャツを畳まず、籠へ入れた。次も、その次も、温かいまま重ねる。靴下だけは左右をそろえたが、丸めなかった。

 乱れた山は、思ったほど大きくなかった。襟と裾が重なり、どれがどの服か分からない。それでも籠からこぼれず、誰にも迷惑をかけていない。

 帰宅して、籠を寝室の隅へ置く。明日の朝、皺が気になれば畳めばいい。困らなければ、そのまま着ればいい。

 部屋の灯りを消すと、終えていない家事が一つ残った。

 けれど今夜は、それを失敗ではなく、眠るための余白と呼ぶことにした。