二十五歳を更新中
汐見うららは、二十五歳を十四年間続けていた。
美容企業の広告塔として、三年ごとに新品の予備肉体へ意識を移す。肌の傷も、骨格の癖も、出産痕もない。配信画面には常に《現在二十五歳》と表示された。
フォロワーは彼女を「時間に勝った女」と呼んだ。
交換済みの体は企業の資料館に保存されていた。
初代は二十八歳、二代目は二十五歳、三代目も二十五歳。臓器の摩耗や食生活の乱れを比較する展示で、顔には白い布がかけられている。
うららは見学を拒んできた。古い体は服と同じだと思いたかった。
ある日、十二歳のファン・望結から移植依頼が届いた。
難病で心臓が弱く、うららの二代目身体と高い適合率がある。だが契約上、保存体は研究資産で、提供できない。
企業AIは代わりに、望結との応援配信を提案した。
「感動指数が上昇し、双方のブランド価値を最大化します」
画面の中で、望結は言った。
「私も大人になったら、うららさんみたいに二十五歳になりたい」
うららは台本通り笑えなかった。
望結には二十五歳が来ないかもしれない。自分は使い終えた心臓を何個も倉庫に並べ、若さを演じている。
彼女は生配信中に資料館へ入り、二代目の布を取った。
そこには、目尻に小さなしわのある自分が眠っていた。撮影で徹夜し、恋人と別れ、母の葬儀に出た体だった。
「これは失敗作じゃありません」
うららはカメラへ言った。
「私が三年間、生きた跡です。そして、まだ誰かを生かせます」
提供は契約違反となり、スポンサーもアカウントも失った。
移植後、望結はゆっくり回復した。うららの現在の体には、交換期限が来たが、更新費を払えなかった。
初めて髪に白いものが混じり、配信を再開すると、視聴者は十分の一になった。
望結は時々、胸の鼓動を録音して送ってきた。
うららはそれを目覚まし音にした。
鏡の中の自分が二十六歳になった朝、彼女は祝杯をあげた。
年齢が増えることを、これほど贅沢で、自由なことだと思ったのは初めてだった。