八人目の作曲家

匿名作曲家集団〈SEVEN〉の正体は、七人の有名プロデューサーだと発表された。

記念公演では、七人が円形のステージを囲み、新曲を一小節ずつ演奏する。司会は「天才たちの共同制作」と称え、中央の空席には〈SEVEN〉の銀色の仮面が置かれた。

制作助手の高楡澄人は、舞台下の端末で再生データを監視していた。

彼が七年間、すべてを書いた。

七人は契約の競合を避けるため、共同の匿名名義を作った。だが忙しくなると、旋律も編曲も澄人へ投げ、完成後だけ「自分の作品」として分け合った。異議を唱えると、誰もが同じことを言った。

「私が書いた」

イントロで七台のシンセが鳴る。ところが、どれも一音ずつ遅い。七人は互いを睨み、クリックを強く叩く。

Aメロの合成声が、七種類の声質で歌う。

「私が書いた」

スクリーンには制作履歴が映るが、七人の名前は最終確認の時刻にしかない。ノート入力、音色設計、修正。何千回もの操作は、すべて〈ASSISTANT-08〉という端末からだった。

一人が叫ぶ。

「助手が勝手に改竄した!」

サビで七つの音がぶつかり、濁る。澄人は舞台下から中央の空席へ上がった。銀の仮面を取る。その裏には、八つ目の小さな入力端子がある。

彼が端子へ自分の端末をつなぐと、曲が初めて正しい拍へそろった。

七人の声の下から、加工されていない澄人の仮歌が現れる。下手で、細く、しかし全音符の位置を知っている声だった。

「私が書いた」

最後だけ、それは所有権を奪い合う七人の主張ではなかった。

制作画面の最初から最後までを動かした者が、事実を述べただけだった。

最後の一音で〈SEVEN〉の文字に一本線が加わり、〈EIGHT〉へ変わる。だが澄人は首を振り、仮面を床へ置いた。

作曲者欄には集団名ではなく、彼の本名が表示される。

七人が同時に抗議する声は、拍も調も合わなかった。澄人は初めて、自分の曲が他人の雑音に聞こえなくなるまで、その余韻を待った。