冬支度を止めた舞踏会

初雪の舞踏会で、エウフェミア・リンスは北部救援物資を横流ししたと告発された。

婚約者ラウクス・ヘルグが、届かなかった毛布の注文書を掲げる。

「彼女が代金を奪い、村人を凍えさせた。婚約を破棄し、領地から追放する!」

窓外では雪が強くなっている。エウフェミアは村人を思って胸を痛めたが、自分のためには泣かなかった。運送契約を一枚だけ広げる。

「注文は取り消されています。取消権を持つのは、舞踏会予算の責任者です」

契約の赤い取消印を温めると、ラウクスの署名と用途変更が浮かぶ。〈毛布代を舞踏会の氷像へ転用〉。証拠はその一行だけだった。

「君が華やかな会を望んだのだ!」

「私は舞踏会の中止を願いました。あなたは雪より体面を選んだ」

氷像の王冠が、暖炉の熱で一滴ずつ溶ける。

エウフェミアは秋のうちに村を回り、家族の人数に合わせて毛布の寸法まで決めていた。注文書の余白には、幼い兄妹には二枚を一組で届けると書いてある。ラウクスはその一行を読まず、客が驚く氷像の高さばかり尋ねた。彼女は救援を止められた自分にも責任があると感じていたが、責任を取ることと、彼の罪を被ることは違う。今必要なのは婚約を守ることではなく、次の冬に同じ取消印を押せない仕組みを作ることだった。

ラウクスは声を潜めた。

「今から毛布を買えばよい。婚約を戻せ。君の家名があれば商人も貸す」

「また私の家名を財布にするのですね」

救援隊を率いて到着した皇太子ティベリウス・ヴェスタが、一人だけ濡れた外套のまま進み出た。

「予備毛布はすでに北へ送った。だが、それで彼女の告発が消えるわけではない。取消印は正式だ」

彼は救った恩を誇らず、エウフェミアへ手を差し出す。

「冬務局を新設する。宴より先に村へ予算を届ける仕組みを、一緒に作ってほしい」

「殿下の妻として、でしょうか」

「まずは制度の共同責任者として。その先を望むなら、私から改めて申し込む」

エウフェミアは溶けかけた氷像から婚約飾りを外し、ラウクスの足元へ置いた。元婚約者へ背を向け、雪の村へ向かう皇太子の手を自分から取った。