出席番号三十七

洲崎は、前の学校で出席番号三十七番だった。

転校先のクラスは三十六人しかいなかった。

「今日から三十七番ね」

担任は簡単に言い、名簿の一番下へ洲崎の名前を書き足した。

ところが教室には机が三十六個しかない。用務員が運んでくるまで、洲崎は教卓の横の丸椅子へ座った。

朝の出席確認。

「一番」

「はい」

「二番」

「はい」

番号が進む。

三十六番が返事をしたあと、担任は名簿を閉じた。

洲崎は手を上げた。

「先生、三十七番」

「あっ、ごめん」

教室に小さな笑いが起きた。

二時間目の小テストには、出席番号を書く欄があった。洲崎が「37」と書くと、隣の生徒が覗き込んだ。

「うち、三十六までだよ」

「今日から増えた」

「裏番号みたい」

「何それ」

「名簿にいない人」

昼休みまでに、洲崎は三度忘れられた。

給食の牛乳が一つ足りず、班分けでは人数が合わず、掃除当番表には名前がない。誰も悪気はない。昨日まで存在しなかった一人分を、学校の仕組みがまだ知らないだけだった。

放課後、ようやく机が届いた。

教室の後ろへ置くと、列から少しはみ出した。

「三十七番席」と誰かが言った。

皆で机を動かし、六列の間隔を少しずつ詰めた。一列につき数センチ。洲崎の机が最後尾へ入る。

そのぶん、教室全体がわずかに窮屈になった。

「これで一人分」

「狭い」

「洲崎が太いから」

「机の幅だよ」

笑いながら椅子へ座る。

翌朝、担任はまた三十六番で名簿を閉じかけた。

すると教室中から声がした。

「先生、三十七」

「忘れてる」

「裏番号」

担任が慌てて名前を読む。

洲崎は「はい」と答えた。

たった二文字の返事が、昨日より大きく出た。

数週間後、名簿も当番表も座席表も印刷し直された。給食も最初から三十七人分届くようになった。

そうなると、洲崎が加わった跡はどこにも見えなくなった。

ただ教室の机だけは、以前より少し狭い間隔で並んでいた。

誰か一人が入るということは、空いていた場所へ収まることではない。

みんなが少しずつ動き、その一人分の幅をつくることなのだと、洲崎は三十七番の席で知った。