十二号箱の白いドレス
通販倉庫の夜勤で、伏見晴海が最終便の積み込みを見送ろうとした午前四時十五分、顧客窓口から最後の出荷依頼が届いた。
〈卒業写真で着る白いドレス。明日午前必着。返品交換品でも可〉
在庫は一着だけ。十二号箱に入ったMサイズだった。後輩は優先ラベルを貼り、梱包台へ運んだ。
晴海は箱の重さが軽いことに気づいた。同じ型のMサイズは通常六百二十グラム前後だが、計量器は五百四十を示している。袋の表示はM、縫い付けタグはXSだった。返品時に別の商品袋へ戻されたらしい。
「このまま出さないで。在庫ゼロにして、窓口へサイズ違いを連絡する」
「でも、朝便の締切まで七分です」
「間に合わせることと、届いたふりをすることは違う」
晴海は返品棚の未検品箱を検索した。同じ注文番号で、XS表示の袋が一つ残っている。開けると中身はM。二着が入れ替わっていた。汚れや破損を確認し、正しい袋へ戻し、計量値を照合する。締切二分前に梱包が終わった。
窓口には、誤表示の経緯と再確認済みであることを伝えた。顧客からは〈間に合わないと思っていたので助かります〉と返事が来た。晴海は配送追跡の最初の読み取りまで確認し、白い箱が本当に最終便へ乗ったのを見届けた。伝票の時刻は四時二十八分。間に合った理由も記録へ残した。
後輩は、重さの基準表を見ながら言った。
「箱を持っただけで分かったんですか」
「分かったんじゃなくて、いつもと違うから測っただけ。勘を自慢すると、次の人が真似できないよ」
晴海は返品再入庫時に、袋のバーコードだけでなく縫い付けタグの写真と重量を残す手順へ変えた。入れ替わった二着の記録も、個人のミスではなく工程の欠落として報告する。
朝礼後、センター長は晴海へ、出荷速度を管理する班長への昇格を勧めた。だが彼女が応募画面を開いたのは、商品品質企画の社内公募だった。
一分を削る側ではなく、違う五十グラムを止められる仕組みを作る側へ行く。
晴海は応募ボタンを押した。