土竜騎士と曲がった人参
竜騎士クオンは、空を飛べなくなって除隊された。
相棒の灰竜モグラが翼を傷めたためだ。
「地を這う竜に価値はない」と隊長は言い、二人を辺境の荒れ地へ追い払った。
モグラは飛べなくても、前脚で土を掘るのが得意だった。
クオンが畝を作り、竜が石を除け、春に人参を一列蒔いた。水やりのたび、モグラは鼻先で土を盛りすぎ、クオンが平らに直した。喧嘩をしても、翌朝には二人でまた畑へ出た。
秋になり、葉の根元が太くなった朝。二人は初めての収穫を迎えた。
クオンは一番立派な葉を掴んだ。
「見ていろ。きっと槍のように真っ直ぐだ」
力を込めて引く。
すぽん、と抜けた人参は、途中から二股に分かれ、片方がくるりと曲がっていた。
モグラが鼻を鳴らす。
「笑うな。お前が石を一個残したせいだぞ」
竜はますます喉を鳴らした。
一本、二本。どれも曲がり、短く、時には足が三本ある。
それでも土を払うたび、鮮やかな橙色が現れた。甘い青臭さが指に残る。
モグラは形の変わった一本を見つけるたび、宝物のように鼻を寄せた。軍の品評会なら落第品だろう。ここでは全部、二人が土の下から救い出した戦利品だった。
一列を抜き終えたころ、上空から白い竜が降りた。
元隊長が鞍上から命令書を投げる。
「西方で空戦だ。モグラを置き、別の竜に乗るなら復隊を認める」
紙は曲がった人参の上に落ちた。
クオンは紙を拾い、読まずに折って籠の隙間へ差した。
「こいつを置くくらいなら、空を置いてきたままでいい」
元隊長は鼻で笑い、飛び去った。
夕方、曲がった人参を厚く切り、鉄鍋で山羊肉と煮た。
蓋の隙間から甘い湯気が漏れる。モグラの分は生のまま葉付きで一本。
竜が噛むと、こりこりと景気のよい音がした。
クオンも煮えた一切れを口へ入れる。
柔らかく、驚くほど甘い。形の悪さは舌には何の関係もない。
モグラは満足そうに土へ腹をつけた。
「地を這うのも悪くないな」
竜が尾で畑を一度叩く。
命令書は籠の底で泥に染まり、鍋の中では曲がった人参が丸い月のように浮いていた。
二人の最初の収穫祭には、空席も、代わりの相棒も必要なかった。