屋根裏の三十一日

妻の一周忌を前に、夫は衣類を処分するよう娘から言われた。

家中に妻の上着や帽子が残り、季節が変わるたび、まだ着る人がいるように見えた。

夫は「今度やる」と答え続けていた。

段ボールを屋根裏へ運び、梯子を上げると、外の一分が、そこでは一日になった。

夫は三十一分で戻るつもりだった。

屋根裏では三十一日ある。

一日目は、何も捨てられなかった。

三日目に、靴下を一足だけ袋へ入れた。

五日目、コートのポケットから映画の半券が出た。

妻と最後に見た映画だと思ったが、日付は二十年前だった。

記憶は、持ち物よりずっと曖昧だった。

十日目、衣類を季節ごとに並べた。

十五日目、妻が一度も着なかった派手な服を見つけた。

娘から贈られ、「似合わない」と笑いながら大切にしまっていたものだ。

夫は初めて、それを娘へ渡そうと思った。

二十日目、妻のエプロンのポケットから小さなメモが出た。

買い物の一覧の下に、

「この人は捨てるのが苦手。私が先なら、急かさないこと」

と書かれていた。

誰に向けた言葉か分からない。

娘か、自分か、それとも夫へ直接言えなかった冗談か。

夫はメモに腹を立てた。

死んだあとまで分かった顔をするな、と声に出した。

屋根裏には怒鳴り返す人がいない。

その静けさが、妻の不在をいちばんはっきりさせた。

二十五日目、夫は泣いた。

二十六日目から、服を畳んだ。

残す箱、娘へ渡す箱、寄付する袋。

最後まで迷ったものは、妻が毎冬着ていた灰色のカーディガンだった。

三十一日目、夫はそれを自分の肩へ掛け、梯子を下りた。

外では三十一分しかたっていない。

娘は台所で待っており、父の髭が一か月分伸びているのを見て言葉を失った。

夫は派手な服を娘へ渡した。

娘は笑いながら胸に当て、「やっぱり似合わない」と言った。

二人で、寄付の袋を車へ積んだ。

灰色のカーディガンだけは、もう一年残した。

急かさないこと、と妻が書いたからではない。

自分で、まだ必要だと決めたからだ。

翌年、夫はそのカーディガンをほどき、小さな膝掛けにした。

屋根裏へは上がらなかった。

普通の時間で三日かかり、その三日を、娘と妻の話をしながら過ごした。