愛着警報

小此木茉莉は、娘を産んだ翌朝に愛情十八点と告げられた。

産院のゆりかごには感情採点器があり、母親が赤ん坊を見たときの愛着を測る。虐待や育児放棄を早期に防ぐため、三十点未満には自動で支援員がつく。

茉莉は驚かなかった。

眠れず、傷が痛み、泣き声を聞くと逃げたくなった。娘の和花を見ても、可愛いより先に、壊したらどうしようと思った。隣の母親が九十四点を出して泣くのを見て、自分には何か欠けていると確信した。

退院後、茉莉は点数を上げようとした。

和花を抱く前に笑顔を作り、「大好き」と一日百回言った。授乳中も愛着画面を見続け、数値が下がると抱き直した。支援員の訪問日には、寝不足でも化粧をして幸福そうに見せた。

愛情は四十七まで上がったが、茉莉は和花の顔ではなく、数字だけを見るようになった。

ある夜、和花が泣きやまず、点数は九まで落ちた。茉莉も泣きながら「ごめんね、愛せなくて」と繰り返した。

夫の道隆が端末を壁から外した。

「愛せるかは、今日は決めなくていい」

「でも、この子には母親が必要なの」

「じゃあ次のおむつを替えよう。その次は僕が抱く。朝まで、それだけでいい」

表示を失った部屋で、茉莉はおむつを替えた。ミルクを作り、吐いた服を洗った。好きかどうか分からないまま、必要なことを一つずつした。

支援員には端末を壊したと疑われた。茉莉は点数を隠さず話し、訪問を断らなかった。料理を運んでもらい、眠る間だけ和花を預けた。支援を受けることと、愛情不足を認めることは同じではないと、少しずつ分かった。ただし再測定だけは拒んだ。

半年後、和花は茉莉の髪を引っ張って初めて笑った。

胸が熱くなったか、心拍が上がったか、茉莉には分からなかった。笑い返すより先に、爪が伸びていないか確かめた。

道隆が「今の、何点かな」と冗談を言った。

茉莉は首を振った。

「知らなくていい。明日も爪を切れるから」

和花がもう一度笑った。

愛着の記録は十八点で止まったまま、二人の生活だけが増えていった。