星灯りを消して

星読み塔では、三晩続けて幼竜が鳴いていた。

藍色の毛に銀の斑点を持つ星竜である。鳴くたび観測盤の針が狂うため、占星術師たちは「凶星を呼ぶ」と恐れ、塔から追い払う術式を準備した。

夜番のイサナは、記録板に同じ時刻が並んでいるのを見つけた。

難しい星図を読めない彼女に任されるのは、灯りの油を足し、時刻を書くだけ。その単純な記録を誰より正確に続けたからこそ、三晩の小さな一致を拾えた。

幼竜が鳴き始めるのは、決まって観測用の星灯りを最大にした直後だ。藍の瞳は光のたび細くなり、翼で顔を隠している。

「この子、眠れないだけでは?」

塔主は笑った。

「神獣が、灯りを怖がるものか」

イサナは返事をせず、星灯りの一つへ黒布をかけた。幼竜の鳴き声が少し弱まる。二つ目を隠すと、逆立っていた背の毛が寝た。

塔主が慌てて止める。

「観測ができなくなる!」

「この子は三晩、眠れていません」

イサナは窓を一つ開け、最後の灯りを消した。塔は冷たい風と、本物の夜に包まれた。

窓の外には、道具の光に消されていた無数の星が浮かんでいる。幼竜は初めて翼から顔を出し、天井ではなく空を見た。喉からこぼれたのは悲鳴ではなく、鈴のような短い声だった。幼竜は机の上で一度大きく伸び、三晩分の眠気を吐き出すように、ふわりとあくびをした。

その声に応えるように、星々が一斉に明るくなる。

観測盤の針が自ら動き、誰も記録できなかった新しい星の位置を示した。塔主は口を開けたまま、黒布と空を見比べている。

幼竜は机を渡り、イサナの腕へよじ登った。手首に鼻を当てると、七つの光点からなる契約印が浮かぶ。

彼女は窓辺へ座り、幼竜を膝に抱いた。

星を散らした毛は夜気のようにさらさらしていたが、腹側には寝床へ潜り込んだ子どもの熱がこもっている。丸い頭が腿へ沈む重さと、ゆっくりほどける呼吸だけで、暗い塔は十分に明るかった。