最初の冬は無税
北境の開拓村には、屋根のない家が十二軒あった。
戦から逃れた人々が丸太を組み始めると、旧役人が「屋根税」の札を打ったからだ。屋根一枚につき銀貨五枚。完成した瞬間に徴収される。払えない家族は、壁だけ作って天幕を張り、雪を待っていた。
新任領代ロイクは、天幕の下で眠る赤子を見た翌朝、札を全部抜いた。
「住み始めた年に、家を持つ罰を与えるのはやめる」
彼が広場へ掲げた規則は、居住年数で三段に分かれていた。
一冬目は無税。二冬目は通常の半額。三冬目から、既存住民と同じく屋根一枚につき銀貨一枚。ただし集めた税は、防火桶と雪下ろし梯子の共同庫にのみ使う。過去へさかのぼって請求しない。誰の家が何年目かは、広場の地図に色札で示す。
「新参者を優遇するのか」
古参の木こりが不満を口にした。
「あなたも家を失って建て直す時は、一冬目になります」
「領主館は?」
「屋根があるので三冬目。塔を含めて銀貨十二枚です」
ロイクはその場で十二枚を箱へ入れた。役所だけを例外にしなかったことで、木こりの眉が少し下がった。
税を恐れず屋根を葺けると分かると、避難民たちは作業を再開した。しかし雪まで十日。十二軒すべては間に合わない。
翌朝、古参の木こりが仲間を連れて現れた。
「命令じゃないぞ」
「もちろんです」
「一冬目が零なら、新参は今冬、税の代わりに食って寝るだけでいいんだな」
「はい。それで生き延びてください」
「なら俺たちは屋根を葺く。来年、こいつらが半額を払えるほど働けば、村の梯子が増える」
鍛冶屋は釘を出し、羊飼いは断熱用の毛を運んだ。避難民は施しを受けるだけではなく、古参家屋の雪下ろしを手伝うと自分から申し出た。だがロイクは、それを税とは数えなかった。
「恩返しまで台帳に載せたら、また借金になります」
互いに助ける行為を徴収に変えない。その線引きが、村人をさらに動かした。
初雪の朝、十二軒目の屋根が閉じた。
広場の地図には白い札が十二枚並び、その上に大きく書かれていた。
『一冬目、零。まず生きる。』
新しい煙突から最初の煙が上がると、古参も新参も同じ空を見上げた。