死者の写真を掲載する

午後三時二分、御影堂脩斗は黒い記憶カードをカメラへ差した。未来撮影機能は〈残り一枚〉

デモ隊の先頭にいる萩尾知聡が、レンズへ顔を向ける。

「撮るな。名前を残せ」

三時六分、知聡は屋上からの一発で倒れる。シャッターを切るたび、脩斗は四分前へ戻った。カードには毎回、まだ起きていない死の写真が一枚増えた。

脩斗は知聡を路地へ押し込んだ。弾道も路地へ変わった。狙撃手の位置を警察へ伝えると、通報を受けた警官が知聡を拘束し、護送車内で殺した。防弾板を持たせた回は、隣の学生が撃たれた。

成功条件は三時六分一秒、知聡の顔を生きた状態で撮影すること。最後の一枚を外せば、次の未来は見えない。

また知聡が言う。

「撮るな。名前を残せ」

脩斗は彼を撮らなかった。カード内の未来写真すべてを、通信社の公開サーバーへ予約時刻より先に掲載した。狙撃地点、警官の識別番号、倒れる知聡。そして未来撮影機の軍用管理番号まで、加工せず送った。

世界中が「これから起きる暗殺」を見た。屋上の影は銃を置き、デモ隊は散った。三時六分一秒、知聡はカメラの外で生きていた。

脩斗は成功写真を撮らなかったため、記者資格を失った。機密機器の所持で逮捕され、情報源も摘発された。公開画像は偽造と断定され、彼の過去作品まで信用を失う。

拘置所で返却されたカメラには、黒いカードだけが残っていた。中身は国家の消去命令で空白だった。

公判で検察は、未来写真が社会混乱を狙った偽造だと主張した。脩斗は機械の実演を拒んだ。再現すれば、別の誰かの死を撮影する必要があるからだ。知聡は証人として出廷せず、匿名で活動を続けた。それも脩斗が望んだことだった。生き残った人間を、自分の無罪を証明する一枚に収めたくない。判決の日、報道席にはかつての同僚が座ったが、誰もシャッターを切らなかった。

脩斗はカードを光へ透かした。何も写っていない四角の向こうで、知聡の名前だけが、新聞の小さな訂正欄に残っていた。