毒杯オークション

地下競売場の商品番号七番は、少年メルクだった。

「どんな毒にも三分耐える実験体! 新薬開発に最適です!」

競売人サディアの声に、錬金術師たちが札を上げる。メルクは首輪につながれ、壇上の椅子へ座っていた。売り文句は嘘だ。彼は三分耐えるのではない。これまで一度も毒で傷ついたことがない。

それを知られると解剖される。だから、いつも苦しむふりをしてきた。

しかしその夜、客席に妹を買った研究所の紋章を見つけた。

「性能を見せましょう」

サディアが第一の杯を飲ませる。〈緑王水〉。鉄を溶かす毒だ。メルクは喉を押さえ、壇上へ倒れるふりをした。

買い手たちが値を上げる。

「もっと強いものを!」

研究所長の声で、第二の杯が運ばれた。七国が封印した〈終末混合液〉。異なる毒性が体内で増殖し、最後には魂まで腐らせる。サディアは売値を吊り上げるため、ためらいなく少年の口へ流し込んだ。

紫煙が壇上を覆い、拘束具が溶け落ちた。

競売人は三分を数え始めた。だが一分目で、研究所長が異常に気づいた。少年の肌に毒斑が一つもない。二分を待たず、メルクは立ち上がった。

煙が晴れる。

彼は杯を持たされた同じ姿勢で立っていた。演技をやめた顔には、苦痛の汗一つない。

「耐える時間を測れ!」

サディアが鑑定師へ怒鳴る。水晶盤が回り、毒性、生命値、防御値を読み取ろうとした。

《緑王水 侵入済》

《終末混合液 侵入済》

《損傷 〇》

客席の錬金術師たちは一斉に札を下ろした。買う価値がないからではない。売り手が制御できないものを、誰も所有できないと悟ったからだ。

「なぜだ! 毒は中にあるのに!」

メルクは首輪を外し、研究所の紋章を指した。

「僕の技能〈無害化〉は、毒を消す力じゃない。僕が敵だと認めた者の害を、害でなくす力だ。今、あなたたち全員を敵と認めた」

妹たちの檻へ続く扉が、溶けた拘束具の向こうに開く。買い手が逃げ出す中、水晶盤だけが再計算を続け、ついに判定欄を白くした。

《防御値 測定不能》