無口な娘と霜熊の首輪

霜熊ブランカは、王宮の氷室を守る白銀の巨獣だった。

誰にも懐かず、近づけば冷気で床を凍らせる。冬至祭では王族に頭を下げるはずだったが、今年は首を振り、儀礼台を壊した。

声を失っている厨房娘コルネは、氷を取りに来て騒ぎへ巻き込まれた。侍従たちは彼女なら悲鳴も上げないと、面白半分に氷室へ押し込む。

ブランカが立ち上がる。白い息でコルネの前髪が凍った。

それでも彼女は、熊が頭を下げないのではなく、下げられないのだと分かった。銀の儀礼首輪が毛の奥へ食い込み、首の後ろでは封印石が熱を持って皮膚を焼いている。

コルネは自分の喉を指し、両手で輪を作ってから、苦しいという身振りをした。

霜熊の目がわずかに動く。

彼女は包丁を床へ置き、氷を砕く木槌と冷却用の薬草布だけを残した。ゆっくり背を向け、首の後ろを見せる。攻撃する気がないという厨房流の合図だった。

やがて巨大な鼻が肩へ触れた。コルネが振り向くと、ブランカは低く身をかがめている。

首輪の留め金は凍りついていた。木槌で周囲の氷だけを割り、皮膚を傷つけないよう留め具を外す。熱い封印石へ薬草布を巻くと、じゅっと白い蒸気が上がった。

首輪が床へ落ちた瞬間、氷室の冷気が和らぐ。

祭司長は「封印が必要だった」と弁明したが、首輪の内側には獣を従わせる私印が刻まれていた。国王は祭司長を罷免し、ブランカへ二度と拘束具を付けないと宣言する。

霜熊はコルネの前で仰向けになり、銀白の腹を見せた。雪花の契約印が彼女の喉元に灯る。声は戻らなくても、選ばれた証は誰の目にも明らかだった。

コルネをからかっていた侍従たちは、彼女の身振りを学ぶよう命じられた。ブランカとの意思疎通には、声よりそのほうが役立ったからだ。初めて習った合図は「痛くないか」。誰もがぎこちなく手を動かす中、霜熊だけはすぐ意味を理解し、コルネへ鼻を寄せた。

コルネが座ると、ブランカは大きな頬を膝へ押しつけた。霜色の毛は冷たく見えて内側に湯気のような温もりを抱き、その重さは言葉より雄弁に彼女を信じていた。