無敵魔導兵は解体済みです

解体屋ゼッカは、討伐隊の戦闘が終わってから呼ばれる男だった。

魔物の皮を剥ぎ、骨を分け、使える部位を傷つけず外す。危険が去った後に刃を入れるだけだと、冒険者は彼を「死体相手の英雄」と笑った。

技能にも厳しい条件がある。

【職業技能《完全解体》:討伐済みの魔物一体を、指定された素材単位へ分解する。】

古代迷宮から現れた魔導巨兵は、七日間止まらなかった。

高さは城門の三倍。聖剣で腕を落としても歯車が拾って付け直し、魔法で胸を焼いても空洞のまま歩く。王都の結界を殴るたび、街全体が沈んだ。

八日目、勇者がようやく胸奥の魔核を砕いた。

歓声が上がったのは一秒だけだった。

核の消えた巨兵は、命令だけで動き続けた。勇者を踏み潰し、結界へ次の拳を振り上げる。賢者は「核がなくても本体は生きている」と絶望した。

ゼッカは、落ちていた魔核の粉を指でこすった。

討伐の証明は十分だ。

心臓に当たる核は破壊され、魔物としての生命反応はない。今動いているのは、死体に残った最後の命令と惰性だけである。

生きているように見えることと、討伐済みであることは別だ。

「戦闘はもう終わってる。ここからは俺の仕事だ」

ゼッカは巨兵の足首へ解体包丁を当てた。

素材指定――外装甲、動力歯車、魔導線、接合鋲、残留命令。

刃を一度引く。

王都を覆っていた巨体に無数の白い線が走った。拳が空中で止まり、鎧板が一枚ずつ地面へ並ぶ。歯車は大きさごとに積まれ、鋲は樽へ収まり、魔導線は巻かれて束になる。

最後に黒い煙のような《進撃せよ》という命令だけが、瓶の中へ封じられた。

城門前には、売れば国の借金を返せるほどの素材が整然と並ぶ。

勇者が戦利品の所有を主張すると、ゼッカは作業票を見せた。

「解体料は素材の半分。ギルド規約です」

王都の職人たちは素材の山を見て目を輝かせた。装甲は橋へ、歯車は水車へ、魔導線は病院の暖房へ使える。戦争のために作られた巨兵が、解体台帳の上で町を直す部品へ変わっていく。ゼッカは最後の瓶だけへ赤札を貼った。命令は再利用不可、と。

【職業《解体屋》が上位職《万機解体皇》へ書き換わりました。】