罪人村の最初の輪

石壁村では、水が刑罰だった。

命令に逆らえば一杯減る。作業が遅ければ家族の分まで減る。罪人として送られた者たちは、喉の渇きで従うことを覚えさせられていた。

新任監督官ロークは、着任初日に水帳簿を燃やした。

看守長が青ざめる。

「罰がなくなれば、誰も働きません」

「水を罰に使うなと言っただけだ」

ロークが掲示した規則は明快だった。

一人一日、飲み水二壺。病人は三壺。罪状、働き、看守への態度では減らさない。

井戸の維持作業には賃金を払い、その額を掲示する。参加しなくても配水量は同じ。道具代と賃金は、採石場の売上から一定の一割だけを使う。

村の古井戸は浅く、夏には底が見える。二本目を掘らなければ規則そのものが守れない。

ロークは広場へ鍬を十二本並べた。

「掘る者を募集する。強制はしない」

誰も取らなかった。

一日目、ロークと看守二人だけが掘った。

二日目、石工だった受刑者が穴を覗き込む。

「壁の角度が悪い。生き埋めになるぞ」

「直せるか」

「賃金は本当に出るのか」

ロークは掲示板の袋から、決めた銅貨をその場で渡した。

石工が鍬を取ると、縄職人、元測量師、料理人が続いた。金だけが理由ではない。働かない者の水まで守られると分かったから、働いた成果を誰かに奪われる恐れがなかった。

看守長も、配水列で怒鳴る時間が減ると気づき、滑車の木材を手配した。

十二日目、二本目の井戸に水が溜まった。

ロークは最初の桶を石工へ差し出す。

石工は飲まず、隣へ回した。隣の男も一口だけ飲み、さらに隣へ渡す。

桶は看守にも渡り、最後にロークの手へ戻った。

命令されていない輪だった。

旧い配水札は井戸枠の補強材に打ちつけられ、その上から新しい板が置かれた。

――水は刑罰に含めない。

――働きは賃金で払い、服従では量らない。

夕方の配水で、看守長は初めて受刑者の壺を目盛りどおり満たした。

多すぎも、少なすぎもしない。

桶をつなぐ鎖が鳴ったが、その日、誰の手首にも鎖はなかった。