耳の違う子らの家

獣人街の孤児たちは、同じ宿舎で眠れなかった。兎族は夜の物音で目を覚まし、狼族は狭い部屋を嫌い、猫族の子は高い場所でなければ眠れない。世話役は「わがまま」と呼び、三度追い出した。

区長トルヴァは、空き倉庫を種族別ではなく、眠り方別の住居へ改修すると決めた。

費用は毛皮市場の売上税だった。ただし一律ではない。生活用の一枚目は免税、二枚目以降の売却額に百分の一。希少種だから高く、ありふれた毛だから安く、という差別を避けるため、実際の売値だけで計算する。徴収額と防音材、梁、寝台の購入額は市場の大秤の横へ貼り出した。

「区長の冬外套は?」

商人が問う。

「新品を二枚買う。二枚目に課税される」

最初に協力したのは、毎晩苦情を言っていた宿屋だった。厚い古絨毯を防音材として提供した。

「静かになるなら、うちにも得がある」

改修会議には、匂いに敏感な狐族や、階段を上れない蹄族の子も参加した。香りの強い塗料は使わず、廊下には緩い坂を付ける。予算が足りないと分かると、市場の商人たちが翌月分を前払いした。ただし利息も優先権も付けないと、板へ明記した。

大工は低い巣箱型の寝台と、高い棚寝台、広い床寝台を作った。子どもたちは種族で部屋を決めず、眠り方の札を自分で選んだ。兎族のネルは、意外にも狼族向けの広い部屋を選んだ。

「耳を伏せれば平気。狭い方が嫌だった」

大人たちは初めて、耳の形だけでは本人の望みが分からないと知った。

玄関の規則には、「静かな部屋」「話してよい部屋」「夜に起きていてよい部屋」の三つだけが書かれた。違反しても追放はせず、翌日の住人会で部屋替えを相談する。会議では声の大きさで決まらぬよう、色石を一人一個ずつ箱へ入れて投票した。

初めて全員が眠った朝、トルヴァが見回ると、玄関には大小さまざまな履物が整然と並んでいた。爪用の革靴、柔らかな布靴、蹄に巻く縄。

その上に、ネルが札を掛けていた。

――耳は違っても、靴を脱いだら家の中。