血統燭は王冠より正直

戴冠記念夜会で、セレスティーヌは偽貴族と断じられた。

「君は、失われた王妹の娘ではない。王家の血を騙り、婚約を得たのだ」

 婚約者トルクァート王子は、集まった貴族の前で言い渡す。

「身分詐称により婚約を破棄する」

 母は生前、出自について何も語らなかった。ただ「名がなくても、選んだ行いは残る」とだけ教えた。セレスティーヌも血を盾にしたことはない。それでもトルクァートは、婚約を結ぶときには家柄を称え、邪魔になった今は同じ家柄を罪へ変えた。母の沈黙まで野心として裁かれることだけは、受け入れられなかった。

 セレスティーヌ・ヴァレスは、胸の痛みを一息で押し込めた。泣けば偽者の動揺、怒れば野心家の本性と呼ばれる。どの表情も罪に変える舞台なら、感情ではなく王家自身の魔法を立たせる。亡き母を侮辱されたことだけは、曖昧な家系図で争いたくない。

「王太后ゲルヒルデ陛下。血統燭を使う許可をください」

 王太后は玉座脇の一本を差し出した。

「許す。火を選ばせるのは、そなたの血だ」

 血統燭は一族の血を色ではなく、存命する最も近い同族へ伸びる光で示す。偽造も養子の否定もできない、王家が継承争いを止めるため作った証拠魔法だった。

 セレスティーヌが指先を炎へ近づける。白い火から金の筋が伸び、王族席を横切った。トルクァートを通り過ぎ、王太后ゲルヒルデの胸元へ結びつく。

 王太后の目が見開かれた。失われた長女の娘。セレスティーヌは、疑いようのない王家の直系だった。

「ならば、なおさら私と結婚すべきだ」

 トルクァートは先ほどの告発を忘れたように手を伸ばす。

「二人の血を合わせれば王位は盤石になる」

「わたくしを偽物と呼んだ口で、今度は王冠として数えるのですね」

 セレスティーヌは婚約指輪を外した。

「破棄を受諾します。血が何であれ、夫を選ぶ権利まで王家へ渡してはいません」

 彼女は元婚約者に背を向けた。ゲルヒルデが、孫としてではなく一人の後継候補として歩めるか、と手を差し出す。セレスティーヌは王冠ではなく選択を見つめ、その手を取った。