隊列の最後尾

オディナは、いつも隊列の最後尾を歩いた。

遅いからではない。前を向く仲間の背中を見て、疲れた足、緩んだ鞘、置き去りになりそうな気配を拾っていた。列が伸びれば前へ合図し、誰かが止まれば後ろから押す。

最後尾で戦闘へ遅れる彼女の貢献は2%。隊長イグレンは、先頭に立てない者を臆病者と呼んだ。

「次から中央へ入れ。ついて来られないなら置いていく」

オディナは命令に従った。

山道で角牛の群れが突進してきたとき、隊は走った。先頭のイグレンだけが速度を上げ、中央の仲間は互いの荷物へぶつかる。後ろを見る者はいない。

最後尾にいた新人が転んだ。

誰も気づかないまま、列は先へ伸びた。角牛は空いた隙間へ入り、隊を分断する。イグレンは止まれば追いつかれると叫び、さらに前へ走った。

中央にいたオディナは、命令を破って引き返した。新人を起こし、槍の石突で地面を叩く。後方の音を合図に、散った仲間が向きを変える。

彼女は速い者を前へ出さず、疲れた者の歩幅へ全員を合わせた。盾を斜めに並べ、角牛の群れを列の外へ流す。最後尾から見ていたからこそ、どこが切れ、誰が残るか分かった。

助けられた新人は、先頭の背中ばかり追っていた自分を恥じた。オディナは礼を求めず、外れた鞘紐を結び直す。いつも同じようにしていたのだろう。誰かが遅れる前に気づき、転ぶ前に装備を直し、列から消える前に名前を呼んでいた。

帰還後、イグレンは自分が先頭で退路を開いたと誇った。

隊列腕輪は、先頭の速度ではなく仲間同士の距離を映した。過去の遠征でも、列が崩れる直前にはオディナの合図が入り、遅れた者は必ず戻っていた。全員が到着して初めて、先頭も成功になる。

隊長章がイグレンの胸から消え、最後尾の位置へ光が走った。

オディナはそこから仲間を見渡す。

「これからは、誰も置いていきません」

《隊列貢献・真正算定》

申告値:2% → 真値:96%

働き順位:首位 オディナ

役割更新:最後尾 → 隊列指揮官

旧隊長イグレン:列内配置待機