集合写真の右端

志乃は休日の夕方、クローゼットの前で服を畳んでいた。来週着るものを出すつもりが、途中から床に座り込み、スマートフォンを眺めている。

昨夜、会社の同期たちが飲みに行った写真が投稿されていた。七人が肩を寄せ、店の看板の前で笑っている。志乃も誘われていたが、残業で間に合わず、〈今日はやめておくね〉と送った。

集合写真の右端には、志乃とよく話す同僚がいた。隣の人と腕を組み、いつもより楽しそうに見える。〈最高のメンバー〉という文章を読むと、自分が抜けた場所がきれいに閉じたようだった。

誰かが欠けても夜は進む。そんな当たり前のことが、写真になると少し残酷だった。

志乃は未読のグループチャットを開いた。昨夜のスタンプや、「また行こう」という言葉が二十件続いている。返信欄に「楽しそう!」と打ち、消した。楽しそうなのは本当で、その中にいなかった寂しさも本当だった。

床には畳みかけのブラウスがある。袖が片方だけ裏返っていた。志乃はそれを直しながら、自分が行けなかった理由をもう一度弁解したくなった。忙しかった。急な仕事だった。ほんとうは行きたかった。

けれど、誰も責めていない場所で弁解を続けると、自分だけが自分を欠席扱いしている気がした。

志乃はチャットに、笑っている猫のスタンプを一つ送った。文章はつけなかった。昨夜の輪へ今から入るのではなく、今見たという印だけでいい。

SNSの写真は保存しなかった。代わりにスマートフォンを棚へ置き、ブラウスを最後まで畳んだ。七人の楽しさは七人のもの。志乃の休日の夕方は、洗剤の匂いと、静かな部屋と、少しの寂しさでできている。

寂しいからといって、嫌われた証拠にはならない。置いていかれたように感じても、次の予定まで消えたわけではない。

志乃は冷蔵庫から缶の炭酸水を出し、畳んだ服の横で飲んだ。泡が強く、喉が痛いくらいだった。

集合写真には写らなかったけれど、今日は自分の服を五枚畳んだ。それを誰にも報告せず、休日の成果として数えることにした。