ゲートを壊した駐車券

立体駐車場の精算機前で、九十九坂烈堂は係員へ詰め寄った。

「駐車券をなくしたくらいで一日料金を取るのか。ゲートも開かなかったせいで車に傷がついた。料金は無料、修理代三十万円を払え」

係員は入庫時刻をナンバー認識で確認できると説明した。九十九坂は発券機を蹴り、監視カメラへ指を立てた。

「映像を消せ。俺の知り合いに言えば、こんな駐車場すぐ潰せるぞ」

後ろで待っていた、黒いライダース姿の大男がヘルメットを外した。皆川谷誠志。顎に傷があり、九十九坂は一瞬言葉を止めた。

「お前も待たされてるだろ。一緒に訴えるか?」

「いいえ。あなたがゲートへ車をぶつけるところを見ました」

九十九坂の顔が険しくなる。

「証拠はあるのか」

皆川谷は自分のバイクへ取り付けた前後カメラを示した。映像には、九十九坂が紛失券手続きを嫌がり、閉じたゲートへ三度車を前進させ、最後に接触する様子が映っていた。係員が停止を求める声も記録されている。

「私は弁護士です。駐車場事故の相談で、ちょうど管理会社へ来ていました」

九十九坂は、ゲートが先に車へ下りたと言い換えた。

管理室の映像が再生される。ゲートは停止位置の前で閉じたまま。九十九坂が車止めを越え、バーを押し曲げていた。車の傷も、接触箇所とは反対側にあり、入庫前から付いていることが入口映像で確認できた。

「古い傷まで請求するつもりでしたね」

皆川谷が言うと、九十九坂は撮影はプライバシー侵害だと叫んだ。

「事故状況の確認と施設防犯のための記録です。今の脅迫的な発言も管理室に残っています。消すよう要求するほうが、説明しにくいでしょう」

管理会社は駐車料金、ゲート修理費、営業停止時間の損害について請求すると通知した。九十九坂が車を出そうとしたが、警察の現場確認が終わるまで動かせない。

皆川谷は目撃者欄へ署名し、映像データを提出した。

紛失券の一日料金三千円が精算機へ表示され、その隣にゲート修理見積もり四十二万円が置かれた瞬間、無料で出るつもりだった男だけが、最も高い駐車時間を自分で延長した。