ベッドの下の百二十足
孤児院の寝室には、子供六十人分の靴と木箱が並んでいた。
壁際だけでは足りず、通路まで荷物がはみ出す。夜の避難訓練では三人が転び、監督官は閉鎖命令を持ってきた。
「部屋を増やす金などない」
院長がうなだれる横で、ひまりはベッドの脚を見た。床との間に、膝ほどの空間がある。六十台すべて、何も使っていない。
彼女は大工に、低い引き出しを作らせた。取っ手は布輪。二人分の靴と着替え箱が一台のベッド下へ収まり、引けば全体が出てくる。
子供たちは宝箱のようだと喜び、自分の印を描いた。靴百二十足、衣服六十箱、冬の毛布まで、夕方には床から消えた。
その夜、監督官が抜き打ちで鐘を鳴らした。
子供たちは暗い寝室を一列で走る。足元に箱も靴もない。最後の幼児が中庭へ出るまで二分四十秒。前回より六分早く、転倒者はゼロだった。
翌朝の掃除でも違いが出た。以前は箱を一つずつ持ち上げ、靴を廊下へ出すだけで四十分。今は引き出しを閉めたまま床の中央を掃き、十分で終わる。埃が溜まる場所も見えるため、咳をしていた子供が減った。
引き出しには一人ずつの印があり、持ち物が混ざらない。靴を探して朝食に遅れる者も、上級生に場所を奪われる幼児もいなくなった。収納は増えたのに、部屋の見た目は以前より空っぽだった。
監督官は自分の長靴をわざと通路へ置き、子供に即座に端へ退けられた。
監督官は白墨で測った避難通路を見る。必要幅一歩半に対し、二歩半。閉鎖理由が消えている。
「引き出しが飛び出せば危険だ」
ひまりはベッドを揺らした。引き出しは奥の木爪に掛かり、取っ手を少し持ち上げなければ開かない。
最年少の少女が自分の引き出しを開け、揃えた赤い靴を見せた。
「もう誰にも踏まれないよ」
院長は顔を覆った。建物を広げず、子供の持ち物を捨てず、道だけが広がった。
監督官は閉鎖命令を折り、代わりに市の施設課へ書状を書く。
「避難所と寄宿舎、計八百床にも採用する」
そしてひまりへ、市章入りの設計契約書を差し出した。
「空いている床下を、全部あなたの収納に変えてほしい」