三十一日の共同戦線
八月三十一日、四人は教室に集まった。
バスケ部の鍵当番だった四家旭が、顧問から自習の許可を取った。私たちの目的は一つ。終わっていない宿題を、日が沈むまでに片づける。
黒板に残件を書き出す。
私は数学十二ページ。旭は英語の和訳二十問。百目木は理科の自由研究。壬生は読書感想文、原稿用紙五枚。
「自由研究が今日からって、自由すぎない?」と私。
「題材は決めてある。人は追い詰められると何時間で宿題を終えるか」
「私たちを実験台にするな」
机を四つ合わせ、共同戦線が始まった。数学は私と旭で分担し、後で説明し合う。英語は壬生が辞書を引く。百目木は全員の作業速度を一時間ごとに記録し、もっともらしい折れ線グラフにした。
正午、まだ笑う余裕があった。二時、会話が減った。四時、旭が「because」の綴りを忘れ、壬生が同じ小説のあらすじを三回書いた。窓から入る夕日が、机の消しゴムかすを金色にした。
五時半、最後の問題が埋まった。
「終わった!」
四人で立ち上がり、誰もいない教室で拍手する。百目木は実験結果をまとめ、『危機感と作業効率には正の相関が見られた』と結論づけた。壬生の感想文も五枚目の最後まで届いた。
帰ろうとしたとき、黒板の隅に貼られたプリントが目に入った。
『夏休みの思い出作文 一六〇〇字』
四人とも動かなかった。
「これ、誰の宿題?」と旭。
「全員」と私。
百目木が腕時計を見る。校舎を出る時刻まで、あと二十五分。
壬生が原稿用紙を四部、机へ配った。
「題材ならある」
私たちは同時に顔を上げる。
窓の外では、運動部が最後の声を上げていた。教室には四人分の問題集、空き缶、折れた鉛筆、自由研究になった私たちの一日が散らばっている。
最初の一行は、全員同じになった。
『八月三十一日、私たちは学校で夏休みを終わらせた。』
その後の内容は、驚くほど違った。旭は友情について書き、百目木は実験記録にし、壬生は悲劇として大げさに描いた。私は、四人で一斉に鉛筆を走らせた夕方の音を書いた。
提出日の朝、誰の作文にも赤字で同じ言葉が返ってきた。
『計画性はないが、よい思い出です。』