三袋目からの炭

ガラス町オルディンでは、小さな工房から順に火が消えていた。

 炉一基につき月銀貨十五枚の「炉税」。一日に炭二袋しか使わない職人も、大工場の巨大炉も同額だった。小工房は閉じ、大工場は税を払った証として黒煙を好きなだけ吐いた。

 税務官モーラは、煤で曇った役所の窓を指で拭った。

「炉の数ではなく、燃やした炭に課しましょう」

 新制度は、工房ごとに一日二袋まで無税。三袋目から一袋につき銅貨一枚。炭問屋の受け渡し札と工房の受領札を照合し、集まった金は共同煙道の濾過布だけに使う。使用袋数と布の購入額は、透明なガラス板へ焼き付ける。

 大工場主が嘲った。

「小工房だけ二袋も無料とは不公平だ」

「あなたの最初の二袋も無料です」

「二袋では炉が温まらん」

「小工房には一日の仕事ができます。必要量の違いまで同じにするのが、公平ではありません」

 職人たちは息を呑んだ。今まで『同額だから平等』と言われ続けていたからだ。炭問屋の秤も広場へ移され、袋の重さまで公開された。

 大工場は初月、銅貨三百枚を納めた。だが翌月には炉の熱を逃がさない蓋を付け、炭を百袋減らした。税逃れではない。燃やさなければ煙も減り、町も工場も得をする。

 小工房は火を戻した。三軒は二袋ずつを持ち寄って共同炉を使い、色ガラスを分担して焼いた。

 濾過布を煙道へ張る日、モーラが人夫を手配すると、町中の職人が梯子を持ってきた。

「皆さんの税で工賃も払えます」

「その金は次の布に残せ」

 大工場主が一番太い綱を引いた。

「俺の工場が一番煙を出した。見える帳簿に名前が残っている以上、隠れてはいられん」

 恥を罰にせず、改善へ変えられる仕組みだった。

 布が張られ、炉に一斉に火が入る。

 煙突から出た煙は薄く、役所の窓へ煤が落ちなかった。三軒の小工房が共同で焼いた最初の窓硝子を、モーラは広場の掲示枠にはめる。

 そこには新しい税率が、向こうの青空ごと透けて見えた。

『二袋までは仕事の火。三袋目からは、空を洗う銅貨一枚。』

 町の子どもたちは、その透明な文字の向こうで久しぶりに白い雲を見た。