五時の校門

五時の校門は、帰る者より先に死者を迎えた。

警備員が校門脇で教師を見つけたとき、空は橙色だった。校舎の時計は五時三分。チャイムが鳴り、無人の昇降口に長く響いた。教師の鞄からは、採点前の答案がなくなっていた。鞄の底には未開封の朝刊と、まだ硬い冷凍パンが入っていた。

警察は放課後の犯行と考えた。部活動を終えた生徒は帰り、職員室も消灯している。前日に教師と争った保護者は、午後四時半から六時まで勤務先にいた。入退室記録も同僚の証言もそろっていた。

校務員だけが敷地に残っていた。彼はチャイムの動作確認をしており、校門へは行っていないと話した。だが靴には土がつき、工具箱から教師の鞄と同じ革片が見つかった。

教師の袖には、保護者が勤務先で使う梱包ひもの繊維が絡んでいた。保護者は三日前の面談で付いたのだろうと言い、夕方の勤務表を示した。答案の中には、その家庭の子どもだけ採点前に返却を求める申請書も挟まっていた。

校務員は、教師が倒れたのを見つけて脈を確かめただけだと訴えた。校門脇の土は毎朝の点検で踏む場所だったが、放課後という前提では、その説明も疑わしく聞こえた。

刑事は昇降口に並ぶ上履きを見た。どれも棚の奥までそろい、床には一人分の足跡もない。放課後なら、部活動の生徒が出入りした跡があるはずだった。教師の鞄には、開封前の朝刊と、まだ硬い冷凍パンが入っていた。

橙色の光が校舎の反対側へ伸ばす影も、夕方にしては向きが逆だった。光は西へ沈むのではなく、東から昇っていた。

時計は十二時間表示。五時三分は午後ではなく午前五時三分だった。チャイムは下校時刻を告げたのではない。毎朝、校務員が始業前に行う音響試験だった。

保護者の勤務記録は夕方のもの。午前四時四十八分、校門の防犯映像には彼の車が映っていた。

校務員の工具箱の革片は、倒れた教師を助けようとして鞄を引いた際についたものだった。

五時の校門が迎えたのは、帰宅する教師ではない。誰より早く答案を取り戻しに来た保護者と、その秘密を守れなかった朝だった。