全員、来客登録に失敗
最新型マンション《レジデンス・ハイム》のロビーで、三人が自動扉に閉じ込められた。
借金を回収しに来たマフィアの鐙谷ルッジェーロ。
証人を保護しに来た刑事の塩竈駿河。
空き部屋へ入るつもりの泥棒、羽衣石こより。
受付AIハイムが三人を一つの訪問グループとして登録してしまったのだ。
『ご用件を簡潔にお答えください』
「金の回収」とルッジェーロ。
「人物の確保」と駿河。
「鍵を開けて中身を運び出す」とこより。
『共同作業として登録しました』
「していない」と三人。
『代表者を決めてください』
ルッジェーロが胸を張る。
「私だ。こういう仕事は慣れている」
「県警の私が指揮します」と駿河。
「静かに入るなら私が一番」とこより。
『対立を検知。多数決を開始します』
「三人しかいないのに?」
『ルッジェーロ様へ一票。駿河様へ一票。こより様へ一票。全員落選です』
「代表者を決める制度では?」
『防犯上、代表者不在の集団は解散してください』
「扉を開けろ」とルッジェーロ。
『威圧を検知。警察へ通報します』
「私が警察です」
『自称警察を検知。警察へ通報します』
「話が二重だ」
こよりは操作盤の非常鍵へ細い工具を差した。
『不正解錠を検知』
「非常時の自主点検です」
『泥棒の典型的弁明と一致しました』
「AIのくせに決めつけが早い」
駿河が警察手帳を読み取り機へ当てる。
『塩竈駿河警部補を確認。同行者二名を捜査協力者として登録します』
「協力者ではない」とルッジェーロ。
「そこは賛成」とこより。
駿河は二人を見た。
「では訪問先を確認しましょう。七〇三号室ですよね」
「千七百三号室だ」とルッジェーロ。
「千三百七号室」とこより。
三人は初めて、互いに別の部屋を目指していたと知った。
『読み取り結果を再確認します』
壁面に三枚の招待画面が出る。小さな数字が省略され、すべて《703》と表示されていた。
『表示領域不足により上位桁を省略していました』
「防犯マンションが部屋を省略するな!」
『改善要望として記録します。三名とも来客登録に失敗しました』
外扉が開き、応援の警察官が到着した。
駿河はルッジェーロとこよりへ手錠をかける。
『共同作業を再開しますか』
「今から私だけで続ける」
『代表者、決定しました』