冬を休む葡萄

葡萄領主ムセルの畑は、冬でも実が絶えなかった。

土の下に樹魔族イリシュが埋められていたからだ。両足を囲む根の輪へ所有杭を打つと、彼女の命が枝へ吸われ、葡萄は季節を無視して甘くなる。宴のたび領主は豊穣の奇跡を誇ったが、土を掘れば根の間に、イリシュが流した琥珀色の涙が固まっていた。

新しい庭師ケインは、畑の権利書と一緒に所有杭を渡された。

「庭師印を上から刻めば、収穫はあなたの手柄です」と領主は言う。

「杭を抜けば?」

「畑が枯れ、魔族も土へ崩れる。優しい主になればよいだけでしょう」

ケインは一房を口にした。甘さの奥に、鉄のような味がした。

夜、彼は土を掘ってイリシュの顔を見つけた。彼女は目だけを開く。声を出す力は春の収穫へ、指を動かす力は夏の収穫へ吸われていた。

「印を替えて。少なくとも、あなたは水をくれた」

「水をやったから所有してよい木などない」

ケインは杭を抜かなかった。先に畑の外へ深い溝を掘り、古い森まで水路をつないだ。根が逃げる道を作ったのだ。

翌朝、領主の前で所有杭を鋸にかける。

「切れば根の輪が締まるぞ!」

輪が締まるより早く、イリシュの根は新しい水路へ走った。杭が二つに折れると、根の輪も役目を失い、乾いた蔓となってほどける。

葡萄は一斉にしぼんだ。イリシュは土から立ち上がり、髪についた葉を払い、森へ歩いていく。

領主はケインを解雇した。彼は小さな借家の庭で、季節どおりに育つ豆を植えた。

春の初め、門の前に見知らぬ苗木が置かれていた。

その横にイリシュが立っている。森へ戻ったはずの彼女は、自由な枝を背中いっぱいに伸ばしていた。

「森は広かったか」

「広すぎて、誰も今日の天気を話さなかった」

彼女は小さな苗を庭の中央へ置く。

「これは?」

「私の種。植える場所は私が選んだ」

ケインは所有杭の代わりに、支柱を一本差した。ただし苗を縛らず、風で倒れそうな側へそっと添えるだけにした。

イリシュは腰の木剣を彼へ預け、土へ両手を入れる。

「ここで庭を作りたい。実を誰に渡すかも、休む季節も、一緒に決める」

「冬は何もしないぞ」

「それが一番楽しみ」

乾いた根の輪は、焚き火の中で葡萄の匂いも残さず灰になった。