名簿にいない同級生

瀬野善也は、高校の同窓会グループを管理していた。二十八歳。開催一週間前、名前のないアカウントから参加申請が届いた。アイコンは三年四組の集合写真で、最後列に黒い影がある。

担任が残した卒業名簿の余白に、一文だけ書かれていた。

《卒業名簿にいない同級生からの友達申請を、承認してはいけない》

学校のある町では、卒業式の前夜に欠席者の席へ名札を置き、全員で門を出るまで人数に含める風習があった。名札だけ残った者は、次の同窓会で仲間を探すという。

善也は申請者が誰か確かめるため、卒業アルバムを調べた。クラスは二十八人なのに、どの写真にも二十九番目の肩や手だけが写っている。現在のグループ参加者も二十八人。欠けている一人を特定すれば、名簿ミスを直せると思った。

善也は一度だけ、申請を承認した。

アカウント名が《二十九番》へ変わり、古い写真を連続投稿した。入学式、文化祭、修学旅行。どの画像でも、二十九番は善也の背後に立っている。写真の日付は現在まで続き、最後は数秒前、善也がスマートフォンを見ている背中だった。

二十九番は、退会した者の代わりに翌日の写真を投稿した。空になった勤務先の机、誰も座らない食卓、葬儀用の黒い額。どの写真にも善也だけが写り込み、背後の影が一枚ごとに濃くなる。投稿時刻はまだ来ていない朝七時四十分で統一されていた。善也が端末の時計を戻しても、未読表示だけは未来へ進んだ。

メンバーたちは「誰を入れた」と書き込んだ後、一人ずつ退会した。善也が二十九番を削除しようとすると、管理者権限は相手へ移っていた。

翌朝、グループ名が変更された。

《瀬野善也の同級生》

参加者は二名。二十九番のアイコンは、善也の現在の顔になっている。善也自身のアイコンは、集合写真の黒い影へ変わった。

二十九番からメッセージが届いた。

「昨日は承認ありがとう。今日から毎朝、一緒に登校しよう」

位置情報には、善也の寝室が《三年四組》として登録されていた。