呪いを着る盾
白塔ギルドのユノアは、いつも顔色が悪かった。
遠征から戻るたび熱を出し、腕には黒い痣が増えた。攻撃も治癒も目立たず、貢献度は一%。英雄カイロスは、彼女を守りながら戦うのは負担だと公言した。
「弱い者を連れて勝てたのは、俺たちが強いからだ」
追放式で契約紋を切られた瞬間、ユノアの痣が薄れた。
代わりに、カイロスたちの皮膚へ黒い線が浮かんだ。
誰かが悲鳴を上げる。足が石のように重くなり、視界が反転し、握った武器が持ち主へ牙を向ける。これまで遠征で受けた呪いが、契約の切断と同時に本来の受け手へ戻ったのだ。
ユノアは床へ落ちた追放札を拾った。
「私は弱かったのではありません。皆さんの呪いを着ていたんです」
カイロスは膝をつきながらも命令した。
「なら早く戻せ。仲間だろう」
「今、追放したばかりです」
彼女は冷たく言ったが、震えている新人だけには手を伸ばした。新人の呪いを自分へ移す。その選択に、広間の守護核が反応した。
隠されていた契約履歴が空中へ開く。毒、狂乱、衰弱、悪夢。遠征のたび、ユノアは皆の状態異常を自分へ引き受けていた。カイロスが無傷で英雄を名乗れたのは、彼女の体が代わりに壊れていたからだった。
ギルド長は慌てて契約紋を差し出す。
「再契約しよう。元の班へ戻す」
ユノアは新人の呪いだけを抱え、首を振った。
「元の役目には戻りません。守る相手は、私が選びます」
守護核の文字が、英雄章より強く輝いた。
黒い線に苦しむカイロスは、仲間だっただろうと何度も叫んだ。ユノアはその言葉を聞き、かつて熱に震えても水すら運ばれなかった夜を思い出す。仲間という呼び名だけで、犠牲へ戻るつもりはなかった。
彼女は守護契約へ、本人の同意なく呪いを移せない規則を刻んだ。負担は治癒班全体で管理し、誰かの体を見えない捨て場にしない。
新人がユノアの外套を肩へ掛けると、英雄章ではなく、その小さな行為へ守護核が祝福を灯した。
《呪詛代替・真正査定》
旧評価 一% → 真値 九十九%
総合貢献順位 首位:ユノア
役職更新 補助術師 → 独立守護官
英雄カイロス → 要保護対象