城下を守った三打

火災から城下町を救った警鐘について、市長ロメオ・ダースは広場の壇上で語った。

「私が新しい避難信号を考案し、鐘楼へ命じました。三打、休止、二打。これが民を救ったのです」

鐘守見習いトワナ・ベルクは、煤のついた服のまま群衆の端にいた。古い連打では市場と川岸の区別がつかないと気づき、三打の信号を作ったのは彼女だ。ロメオは火が消えたあと鐘楼へ来て、記録板から名札を外した。

「見習いは、私の指示どおり鐘を鳴らしただけです」

領主が鐘楼を見上げる。

「考案者の名を、鐘の記憶へ正式登録しよう。市長、自ら信号を鳴らしてくれ」

ロメオは得意げに綱を引いた。

ごうん、ごうん、ごうん。

間を置き、二打。

鐘の表面に金色の文字が走った。

城下の警鐘は、初めて新しい打ち方が使われた時、その発案を口にした者の声を保存する。正式登録の再演が、記録を開く鍵だった。

火災の夜の音が広場へ降る。

『市場は三打、川岸は二打に分けましょう。間を置けば、煙の中でも聞き違えません』

トワナの声。

『勝手な合図を作るな。責任を取れるのか』

ロメオの苛立った声。

『今決めなければ、皆が同じ門へ殺到します』

続いて三打。人々が別々の避難路へ動き、門の混雑が解ける音まで残っていた。

火が消えたあとの記録も続く。

『記録板からトワナの名を削れ。市長の指示で鳴らしたことにする』

『鐘は声を覚えています』

『正式登録で私が鳴らせば、私の名に上書きされる』

ロメオは今、まさに自分で正式登録の鐘を鳴らし、消したかった声を全市民へ聞かせた。

「統治者が認めてこそ発明は功績になる!」

彼が叫ぶと、群衆から拍手が一つ起きた。トワナへ向けた拍手は、すぐ広場全体へ広がった。

鐘楼から、子どもが試すように三打が返った。市場の者は西門へ、川岸の者は高台へ――火事の夜と同じ動きを、今度は笑いながら確かめる。トワナの考えた間は、権力者の名がなくても町の身体に残っていた。

領主は市長杖を衛兵に預けさせ、解任状を読み上げる。

「ロメオ・ダース。公的記録の隠蔽と功績の詐取により、本日付で市長職を解く」