大魔法を一拭きする清掃員

《九条蓮華の横に清掃員? 罰ゲーム企画か》

《万色スライムは受けた属性を全部耐性化する》

《蓮華の全属性魔法が逆に育ててるぞ》

人気魔法配信者・九条蓮華が七色の魔法陣を閉じた。万色スライムは一回り大きくなり、表面に炎、氷、雷、光の紋様を浮かべる。床には過去の攻略者が残した焦げ跡や凍結痕が重なっていたが、共同攻略者の雨宮澄人は入場直後から、それらを一つずつ拭っていた。今、柄の短いモップを水桶へ浸す。

「悪い、僕の魔法じゃもう傷がつかない」

「十分です。ずいぶん汚していただきました」

スライムが七属性の濁流となって迫る。蓮華は残った魔力で澄人の前へ障壁を張った。

《取得耐性七種、弱点欄が全部消滅》

《清掃職の浄化は毒や汚泥にしか効かない》

《モップ一本で触れたら吸収される》

澄人は桶の水を捨てた。必要なのは洗剤でも聖水でもなく、乾いた布面だけだった。蓮華が七属性を一つ残らず付着させたことで、透明だった本体の輪郭が七色の境界として見えている。彼は障壁の外へ出て、迫るスライムの表面を一度だけ横へ拭いた。

きゅ、と床掃除のような音がした。

七色がモップの跡から消え、スライムは透明になる。耐性表示も、蓄積した魔力も、巨大化した体積さえ拭き取られ、掌に載る水滴ほどまで縮んだ。

蓮華は指先へ無属性の小さな灯をつくり、水滴を蒸発させる。

「属性を消したの?」

「後から付着したものを汚れとして落としました。あなたの魔法が七色すべて付けてくれたから、本体との境目が見えたんです」

《解析班、初期核以外の全データが“付着物”判定へ変更》

《蓮華が耐性を完成させ、澄人が完成品ごと清掃。逆転の共同作業》

《清掃員を笑ってた人、今すぐコメント欄も掃除してもらえ》

蓮華は高価な杖をモップと並べ、二本まとめて肩へ担いだ。

「次の大魔法も派手に散らかす。片づけは、共同詠唱ってことで頼む」

切り抜き動画の題名がリアルタイムで修正された。

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