御守りの露店番号

初詣の限定御守りを求める列で、瑞穂ヶ丘未景は、宇津木原啓津が何度も先頭へ戻っているのを見た。

一度目は帽子、二度目は眼鏡、三度目は上着を替えていた。

境内では一人一体。啓津は受け取るたび、門前の露店へ運び、十倍の値札を付けている。

「御守りは商品じゃないって言うなら、転売だって自由だろ」

止めに入った巫女へ、啓津は露店商の許可証を見せた。だが番号は、前年に廃業した店のものだった。

未景は神社の氏子総代として、境内整理を手伝っていた。社務所へ連絡すると、今回の御守りには授与時刻と番号を記録した小さな印があり、同じ人物が繰り返し受け取れば履歴で分かる仕組みだった。衣服を替えても、授与所のカメラと決済端末の番号は同じ人物を記録していた。

啓津は他人へ頼まれただけだと言った。

監視映像には、彼が衣服を替え、代理の人々から御守りを買い取る姿が残っている。露店では“神社公認・本日限り”と虚偽表示し、神社の紋を勝手に使っていた。

露店の帳簿には、午前中だけで百体以上を仕入れたことになっていたが、購入者欄は同じ筆跡で埋められていた。商店会の責任者が許可証を確認する。番号は無効。道路使用の届出もなく、参道を塞いでいたため、露店は即時撤去となった。警察官が偽許可証と売上帳を預かる。

啓津は、在庫を抱えれば神社が困るだろうと笑った。

宮司は拡声器を取った。

「本日の御守りは、希望者全員へ後日郵送でも授与します。数量限定という案内は、転売防止のため撤回します」

製作所は追加分を用意済みだった。限定性がなくなり、啓津の高値商品はその場で価値を失う。通販サイトも“神社公認”の表示を理由に出品を削除した。先払いされた代金は購入者へ返され、啓津の売上口座は調査のため保留になった。

未景は、長時間並べない高齢者の郵送申し込みを手伝った。

啓津の露店番号が商店会名簿から消え、社務所に追加授与の受付印が押された瞬間、買い占めた御守りは守ってくれる商品ではなく、偽りを並べた証拠の束になった。