既読にならない招待状

同窓会のグループチャットで、茉莉の名前だけが灰色のままだった。

招待を送ってから三か月、一度も既読がつかない。ひばりは「きっと番号が変わったんだよ」と言われるたび、安堵と失望を同時に覚えた。

高校三年の冬、試験問題が流出したという噂が立ち、茉莉が疑われた。彼女は職員室へ呼ばれ、数日後に転校した。ひばりは親友だったのに、教室で隣の席を空けたまま、何も聞かなかった。

最後に靴箱で会ったとき、茉莉は「信じてるって言って」と言った。ひばりは答えられず、制服の袖口ばかり見ていた。あとから疑いが誤りだったと知ったが、連絡先はもう使われていなかった。

同窓会の会場には、当時の座席表が飾られている。茉莉の名の横へ、誰かが「元気かな」と付箋を貼った。ひばりはその軽さに腹が立ち、すぐ自分も同じ場所にいたと気づいた。元気でいてほしいと願うだけで、自分が黙った事実を避けている。

担任から、茉莉の実家が数年前に移ったと聞いた。ただ、転居先へ年賀状を転送してもらったことがあり、古い住所なら分かるという。

ひばりは会場を抜け、近くのコンビニで便箋を買った。

『同窓会をしています。来てほしかった、と書く資格があるか分かりません』

そこまで書いて手が止まる。許してほしい。事情を教えてほしい。友達に戻りたい。どれも、自分のための願いだった。

便箋を替えた。

『あの日、信じてると言えませんでした。黙っていた私が間違っていました。返事はいりません。あなたが説明しなくても、今は信じています』

同窓会へ戻ると、集合写真の時間だった。ひばりは茉莉の分の隙間を作らなかった。いつか戻ってくる席を勝手に決めることも、もうしない。

翌朝、担任に教わった古い住所へ手紙を出した。転送されるか、戻ってくるか、届かないかは分からない。

封筒には返信先を書いたが、返信用封筒は入れなかった。

既読の印を求めずに言葉を送り出せたとき、ひばりはようやく、十年前の靴箱から一歩離れた。