最低レベルが開ける門
「扉が閉まる! 急げ!」
朔也たちは溶岩回廊を駆けた。背後では炎巨人が迫り、前方の石門に青い文字が浮かんでいる。
【この門は、パーティ内で最もレベルの低い者にのみ開けられる】
上位ギルドはこの仕様のため、初心者を《鍵役》として雇った。戦闘には参加させず、扉を開けたら後方へ置いていく。ミナも報酬と引き換えに七枚の門を開けたが、隊長は一度も彼女を名前で呼ばなかった。低い数字だけが必要だった。
「ミナ、前へ!」
全員がレベル百を超える中、加入したばかりのミナだけが十二だった。彼女が触れると門は開く。高難度迷宮で、初心者は鍵として連れ回されていた。
「足手まといでも役には立つな」
隊長の言葉に、ミナは笑わなかった。
七枚目の門を越え、最深部へ着く。そこには《現実への出口》と刻まれた白い扉があった。だがミナが触れても反応しない。
「なぜだ。お前が最低だろ!」
表示を確認した朔也は、パーティ欄の最下部に小さな名前を見つけた。迷宮の入口からずっとついてきた案内人NPC、オル。レベル表示はゼロ。戦えないため、誰も人数に数えていなかった。それでも彼は近道を教え、負傷者へ水を運び、置き去りにされたミナを背負ってここまで来た。数字の低さと、役割の小ささは同じではない。
隊長が老人を引きずり出す。
「さっさと開けろ」
オルは扉へ手を置いた。それでも開かない。
「命令されて触るだけでは、開けたことにならんらしい」
朔也は剣を下ろした。
「オルさん。あなたは、この門を開けたいですか」
老人は長く扉を見つめた。
「向こうへ行けば、お前たちは帰る。こちらは置き去りだ」
「なら、一緒に来てください」
隊長が怒鳴ったが、朔也はオルをパーティの先頭へ移した。老人が自分の意志で取っ手を回す。白い扉は外へではなく、世界全体へ光を放った。
【最低レベル0による開門を確認】
【隠しクエスト《鍵ではなく先頭へ》達成】
【出口の利用権を、プレイヤーだけでなく全住民へ拡張します】
【この門は帰還口ではありません――二つの世界を結ぶ入口です】