月祭りの後湯

月祭りの町では、踊り子も露店商も浴場へ入れなかった。

祭りが終わるのは深夜。共同浴場は日没で閉まり、朝には次の客が並ぶ。華やかな祭りの裏で、働いた者だけが冷たい井戸水を浴びていた。

祭礼監督エルネは、閉場を二刻延ばす提案をした。

追加の薪と夜番の賃金は、祭り期間だけ露店売上の百分の一で賄う。ただし赤字の露店は免除。売上は自己申告ではなく、広場の共通銭箱へ入れた取引札の枚数で計算する。集まった額、夜番人数、余った薪は翌朝掲示し、残金は祭り後に露店へ比率で返す。

「夜の客にだけ得をさせる税だ」と昼商いの陶器屋が言った。

エルネは祭りの案内図を広げた。

「遅くまで働く人が翌日も店を開ければ、昼の客も増えます。それでも嫌なら、あなたの区画だけ延長時間の案内板から外します」

陶器屋は黙った。自分だけ客を逃すのは困る。

夜番は強制せず、通常賃金の一・五倍で募集した。すると若い衛兵だけでなく、昼に店を閉めるパン屋の夫婦まで交代を申し出た。踊り子たちは床掃除を引き受け、代わりに閉場後の最後の枠を予約した。

祭りの夜、最後の太鼓が鳴り終わっても、浴場の灯りは消えなかった。

踊り子が足首の鈴を外し、湯へ沈む。露店商は油の匂いを洗い流し、夜番は入口で温かい茶を飲んだ。誰も特別扱いされず、働いた順に木札が進んだ。

屋根の上では、祭りの月が湯煙に滲んでいた。

翌朝、余った銅貨が一枚ずつ露店へ返される。陶器屋は受け取らず、入口の灯籠へ入れた。

延長時間の収支は、薪代と夜番賃金を引いても銅貨十二枚余った。エルネが翌年へ繰り越そうとすると、露店主たちは規則どおり返金を選んだ。受け取った一枚を寄付する者も、持ち帰る者もいた。どちらも同じように尊重された。協力は寄付を強制することではない。自分の取り分を知ったうえで、出すか戻すかを選べることだと、若い踊り子は木札へ書き残した。

その夜、浴場の新しい灯りが、祭りの終わった広場で最初にともった。