来月の時刻表

水科奈々が一日だけ病院を出て家へ戻ると、父は冷蔵庫の扉に古いバス時刻表を貼ったままにしていた。

紙は去年の四月版で、角が油を吸って透けている。父は病院へ来るたび、その表の十一時二十分に赤丸をつけた便へ乗る。しかし来月から路線が減り、十一時二十分はなくなる。奈々が教えると、父は「その時になったら考える」と言った。

奈々には、その時にもう一度説明できる自信がなかった。今日の用事は、新しい時刻表を印刷して貼り替えることにした。

スマートフォンで市営バスのページを開く。改正後の表は小さく、父の老眼では読めない。奈々はコンビニのコピー機へデータを送り、A4ではなくA3を選んだ。白黒は十円、カラーは八十円。曜日ごとの色分けが見えるよう、カラーにした。

印刷された紙は大きすぎて、持ち帰る途中で風に折れた。奈々は歩道の端へ寄り、折り目が数字を隠していないか確かめた。病院へ戻る時刻まで一時間半。父は隣で、紙くらい自分が持つと言ったが、奈々は筒のように丸めて胸へ抱えた。

家では、古い表を留めていた透明テープが固くなっていた。剥がすと、冷蔵庫の塗装まで少し浮いた。父が「ああ」と声を上げ、奈々は剥がした部分を指で戻した。

新しい表を食卓へ広げ、不要な路線を鋏で切る。父が使うのは駅前と病院の往復だけだ。平日欄の十時五十分へ赤丸をつけ、その下へ「帰りは一階玄関、十五時十分」と書いた。帰りの便は診察が延びても間に合う時刻を選んだ。

父は横から見て、「来月も面会は火曜か」と聞いた。

「病院に確認して」

奈々は答え、火曜日の欄だけを囲むことはしなかった。今日決めるのはバスの時間までだ。

紙を冷蔵庫へ当てると、A3では横が余った。左右を二センチずつ折り、上の角からテープで留める。父が下を持ち、奈々が傾きを直す。古い表より少し右へ寄せると、扉の取っ手にかからない。

最後に左下へ透明テープを貼る。奈々は爪で端まで押さえ、来月の数字が平らに止まった。