欠番九百九十九
廃油処理会社への補助金支払会議で、朽網原響は収集運搬を請け負う小会社の事務員として、再生処理九百九十九トンの実績確認を求められた。処理量に応じて自治体から一億円近い補助金が出る。
実績表の最終管理票番号はR-999。排出元、運搬業者、処理施設の三者印がそろい、重量も九百九十九トンちょうどだった。
響は管理票の番号規則を確認した。R-998の次はR-1000で、R-999はシステム改修時に欠番として予約されている。発行できない番号だった。
処理会社社長は、手書き管理票を特例発行したと答えた。
だが自治体規程では手書き票にも二次元コードが必要で、R-999のコードを読み取ると、処理会社の社内テスト画面へつながった。公的管理システムには登録がない。
重量記録にも矛盾があった。収集車一台の最大積載は十トンなのに、R-999では一便で九百九十九トンを運んだことになっている。計量時刻は午前二時〇分から二時〇分まで、所要時間ゼロ分だった。
排出元の工場は前年に閉鎖され、当日は電力使用量も入門記録もゼロ。三者印のうち排出元印は、古い契約書から複写した画像だった。
処理会社は、複数便をまとめた総括票だと説明を変えた。響は運転日報を示した。自社が実際に運んだのは九十九・九トン。実績表では小数点が消され、十倍にされている。
社長は補助金が下りれば運搬会社にも追加発注すると囁いた。
響は確認印を押さずに言った。
「欠番へ九百トン積んでも、運べる場所はありません」
響は収集車のGPS記録も出した。対象月に処理施設へ入った便は十回だけで、総重量九十九・九トンと一致する。残り九百トン分の処理費は、社長の兄が持つ休眠会社へ外注費として振り込む予定だった。欠番は、資金の行き先まで隠す器になっていた。
自治体の会計責任者が補助金決裁を止めた。R-999は発行されず、一億円も処理場へ流れなかった。