番号札四十七番

城戸都季の社員証が裏返ると、四十七番の札が現れた。

新人研修の最中だった。講師として前に立ち、電話応対の注意点を説明していると、首から下げたケースの裏で金色の数字が揺れた。

前日のコスプレコンテストでつけた出場者札を、抜き忘れていたのだ。帰宅後も受賞の余韻が消えず、社員証ケースの後ろへ大切にしまったまま眠ってしまった。

四十七番は、仮面の女侯爵を演じた都季の番号だった。審査結果は二位。受賞写真はすでに公式サイトへ載っている。

最前列の新入社員、狩生が札を見て目を見開いた。

都季はケースを押さえ、数字を裏へ戻した。何事もなかったように説明を続けた。けれど声が上ずり、敬語の例文を一つ飛ばした。

休憩に入ると、狩生が近づいてきた。

「これ、落ちました」

渡されたのは、ケースから抜けた四十七番の札だった。

都季は「知人のものです」と言いかけた。

狩生は自分のスマートフォンを出さず、声を落とした。

「昨日、会場にいました。でも写真は見せません。会社で知られたくないかもしれないので」

その気遣いのほうが、都季には痛かった。知られたくないと言いながら、コンテストでは何百人もの前へ出た。拍手を受けた自分を、月曜になると失敗の証拠のように隠している。怖いのは趣味ではなく、職場の自分と結びついた後の評価だった。

「どうして分かったんですか」

「仮面の傷です。城戸さん、研修資料にも、失敗した箇所を隠さず直し方を書いていたから。衣装の制作記録も同じでした」

都季は思わず札を見た。

女侯爵の仮面には、塗装を失敗した筋を金色の傷として残していた。それが作品の一部になった。

「四十七番は私です」

都季は言った。

「勤務中は城戸です。趣味のアカウントではTOKI。どちらで知ったことも、勝手に広げないでください」

「はい」

狩生は、研修で返事をするときより真剣にうなずいた。

午後の講義で、都季は社員証を表へ戻した。

四十七番の札は捨てず、透明ケースの中で社員証の後ろへ重ねた。時々数字が透けたが、もう慌てて押さえなかった。