病を選ぶ指
公開治療の幕の裏で、ネフラは鎖をつけられた男を見つけた。
男の手には、銀箱から突き出た聖者の指骨が握らされている。幕の表では高位司祭ザルドが病人へ祝福を与え、奇跡を演じていた。
指骨を病人へ向けると、病は消える。
ただし病は無くならず、指骨を握った者の身体へ移る。教会は囚人を幕の裏に並べ、使い潰してきた。表からは、司祭が手をかざすだけに見える。
「次は領主の息子だ」とザルドが告げる。
鎖の男はすでに片肺を腐らせ、皮膚を斑点で覆われていた。もう一度使えば死ぬ。
ネフラは鍵を外し、指骨を奪った。
幕を開ける。
何百人もの病人が広場に並び、その外には献金できず追い返された者たちがいる。ザルドは笑顔のまま、小声で命じた。
「裏へ戻れ」
ネフラは領主の息子へ指を向けた。
少年の腫れが引き、代わりに彼女の首へ紫の瘤が生まれる。
群衆が歓声を上げる。
「今の病は、どこへ消えましたか」
ネフラが問う。ザルドは答えない。
彼女は幕をすべて引き落とした。鎖、汚れた寝台、病死した囚人の名札が白日の下へ現れる。
「偽物だ!」と司祭が叫ぶ。
ネフラは献金列を離れ、外の病人へ指骨を向けた。
盲いた女が光を取り戻し、ネフラの左目が濁る。
脚の萎えた老人が立ち、彼女の膝が逆向きに折れる。
肺病の兄弟が呼吸し、彼女の胸から二種類の咳が噴き出す。
一人治すたび、教会の奇跡が何でできていたかが、彼女の身体へ現れた。ザルドが衛兵を呼ぶが、治された者たちが道を塞ぐ。
最後に、幕の裏で鎖につながれていた男が倒れた。これまで移された病が全身を食っている。
ネフラは這って近づき、指骨を彼へ向けた。
「やめろ。お前にはもう入らない」
彼女は笑った。
「入る場所なら、教会がたくさん空けてくれました」
男の皮膚から斑点が消え、肺が鳴る。ネフラの身体は一度大きく痙攣し、それから静かになった。
広場に健康な者たちが立つ。
その中央で、彼女だけが片目を失い、骨を曲げ、皮膚を七色の病に染めていた。胸の中では異なる速さの鼓動が重なり、喉からは老人、幼子、囚人の咳が順番に漏れる。
ザルドは奇跡だと呼べなくなった。
聖者の指が示したのは天ではない。
教会が病を押し込めてきた、一人の女の身体だった。