癒やせなかった聖痕のそばで
治癒士レオンハルトの光は、古代遺跡で突然消えた。
毒矢を受けた斧使いマーラの傷へ両手を当てても、聖痕は冷たいまま。剣僧アスランが毒を吸い出し、魔術師フェリスが転移石を砕いたことで命は助かったが、依頼は中断された。
レオンハルトの治癒は、これまで三人の傷を数え切れないほど閉じてきた。マーラは『借りは斧百振り分』と笑い、アスランは祈りの順番を彼に譲り、フェリスは光を記録する魔具を作った。だからこそ一度の不発で、積み上げた信頼まで偽物になる気がした。
診療院の廊下では別のパーティーが後任の治癒士を募集していた。レオンハルトは三人も同じ紙を取ると思い、見ないまま通り過ぎた。
診療院で「過労による一時的な失光」と告げられても、レオンハルトは安心できない。
治癒の名門に生まれ、力がある間だけ家族に席を与えられた。十三歳で一度光を失った時には、離れの物置へ移された。
今度は仲間の命まで危険にした。
マーラが眠る病室を出ると、アスランは礼拝堂へ、フェリスは薬局へ向かった。レオンハルトは宿へ戻り、白い法衣を畳んだ。
「回復したら、治療費だけ返しに来ます」
扉が乱暴に開き、病衣のマーラが斧を引きずって入ってきた。
「これ、預かれ。医者に取り上げられる前に隠せ」
礼拝堂から戻ったアスランは、祈祷台の小さな灯を硝子壺に移して机へ置く。
「光が戻るまで、私の灯を共同装備にする」
フェリスは薬局の袋を三つではなく四つに分け、レオンハルトの名札が付いた分を寝台へ置いた。
「毒矢の解毒薬。治癒術がなくても使えるよう、全員分買った」
レオンハルトは法衣を抱えた。
「治せない僕を連れていく理由がありません」
マーラは斧の柄を彼の膝へ載せる。
「私が倒れた時、名前を呼び続けた。あれで戻れた」
アスランは宿帳の職業欄に「治癒士」と書かず、ただ四人目の名を記した。フェリスは帰還馬車の席を一つ増やす。
聖痕はまだ暗い。
それでも硝子壺の灯は四人の寝台の中央に置かれ、誰もレオンハルトを光の有無で部屋の外へ分けなかった。